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宝塚は「天国と地獄が両方ある場所」 元男役がOGの第二の人生の支援を始めた事情

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・瀬谷 宏

教えてくれた人:竹山 マユミ

宝塚は「天国と地獄が両方あるところ」 両極端の経験で得た「人間として必要なもの」

常に先を見据える生尾さん。不安で立ち止まることはしないという【写真:徳原隆元】
常に先を見据える生尾さん。不安で立ち止まることはしないという【写真:徳原隆元】

竹山:年代は違えど、共感できるという深い絆があるのを感じますね。改めて振り返ってみて、生尾さんにとって宝塚とはどんな場所だったと思いますか。

生尾:う~ん、どんな場所かな……。天国と地獄が両方あるところですね。本当に両極端な経験ができる貴重な場所です。光に包まれている天国だけど、同時にすごく地獄でもあり、そして地獄があるから天国に行きたいって思える。だから、舞台に立ったときに、いろんなことに心からの感謝を感じることができる。光と影を両方経験できる場所。そして、その光と影を、常に行ったり来たり。今日、自分が光にいると思っていたら、明日には突然影のほうに入って光の人がうらやましくなってしまうとか。両方同時に経験ができるという点では、人間として本当に必要な経験を学べる素晴らしい場所だと思います。

竹山:今の生尾さんを拝見しているとよくわかるような気がします。最後に今後の目標があればぜひお聞かせください。

生尾:私は学歴が中卒で社会的に地位もなく、強がりだけれど実はとても弱い人間です。そんな女性でもこの日本の学歴社会でここまでやってのけることができる。たとえ恵まれた状況でなくても努力をし続ければここまで社会に認めてもらえる。そう思ってもらえる存在になりたいです。

竹山:やはり誰かに喜んでもらいたいという思いがあるのですね。

生尾:いつも誰かに喜んでもらいたいと思っています。それが原動力ですね。だからこそ、諦めたくないというのがあります。たとえ周りのみんなが無理と言っても、努力さえやめなければ必ずできちゃうものなんだなと信じています。今の会社に入社させてもらったときも、ほとんどの人が「すぐ辞めるでしょう」と言っていました。一番そう思っていたのが、母親でしたけれども(笑)。

 でも今、19年目になりました。中卒なのにお医者様とか研究者の方々が対等に話してくださるんですよ。ありがたいです。企業や学会といった場で講演会などをさせていただくことも。普通に考えたらあり得ないことでしょう。でも、私はこのあり得ないと周りに思われることにこれからもチャレンジしていきます。そんなところに人生のおもしろみを感じています。

 タカラジェンヌのセカンドキャリア支援についても、いろいろな人に「劇団が動かないと無理だよ」「美作子が1人でやっても無理だよ」って言われるんです。でも、無理って言われると「いや無理じゃないです。私はやります」って返します(笑)。どんな手段を使っても、どんなに時間がかかっても、私は絶対にそれをやるんです。正真正銘の負けず嫌いです(笑)。

竹山:「無理」という言葉がスイッチなのですね。

生尾:無理って言われると、パワーが湧いてくる。今や将来が不安で「生きることがつらい」「未来が不安」と思っている方に、私がひと言だけ言えることがあるなら「絶対大丈夫だよ」っていう言葉。確かに、不安を断ち切るのは大変だと思う。たとえば、散らばった米粒を集め続ける感じ。でも、集め続けたらおにぎりが作れるし、お茶碗いっぱいのごはんもできる。もっともっと続けたら米俵にもなる。だから不安なんて持たないほうがいい。人は不安と思った瞬間に、不安のほうに引きずられていくものだと思うので。

 もちろん私にだって不安なことはありますが、今まで生きてきたなかで、目的を叶えることでできなかったことはひとつもないです。それが自信になって今を生きることができています。

竹山:反骨心というか、ものすごいエネルギーは宝塚時代の経験が糧になっていて、一つひとつの経験からこういう感情になるということを今でもすごく大切になさっているのでしょうね。

生尾:今考えると、宝塚を退団したあの中国公演から帰る飛行機での経験があったからこそ、今の私の生き様の基本になっているでしょうし。もうやるしかないんですよ。生きていくためには前に常に進むしかない。振り返って後ろを見ることもしないです。

<終わり>

◇生尾美作子(いくお・みさこ)
大阪府出身。11月16日生まれ。愛称は「みさこ」。母親、妹もタカラジェンヌの宝塚一家で育つ。1997年に83期として宝塚歌劇団に入団。劇団在籍時は「拓麻早希」の名前で活動した。雪組公演「仮面のロマネスク/ゴールデン・デイズ」で初舞台。男役から娘役に転向し、2002年に退団。退団後は俳優業を経て、DNA研究の会社へ入社。美容・健康の研究を行う。現在は免疫美容家として、人間本来の力を伸ばす美容健康法を提唱している。2023年3月21日より、主宰する「ジェンヌクラス」(旧ジェンヌコレクション)が活動を開始。元宝塚のセカンドキャリアにつながる活動(俳優・MC・美容家・企業等)を個々に提案しながら、SDGs、フェムテック、シングルマザー等の問題にも取り組む。芸能事務所リバイヴ所属。インスタグラム(misako_ikuo)では免疫美容に関する情報などを展開中。

(Hint-Pot編集部・瀬谷 宏)

竹山 マユミ(たけやま・まゆみ)

明治大学卒業。広島テレビ放送のアナウンサーを経てフリーアナ、DJとして各テレビ局やラジオ局で番組を担当。コーピングインスティテュート コーピング認定コーチ。宝塚歌劇団は生まれる前から観劇するほどの大ファン。