仕事・人生
ダウン症モデル菜桜さんを支える母 夢を追いかける3きょうだいを育て上げるまで
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中高生からお悩み相談が来ることも たくさんの人に希望を与える菜桜さん
「みんなが笑顔になれるモデルになりたいです」――将来の夢を質問したところ、目をキラキラさせて語る菜桜さん。その隣で、由美さんは「昔からずっとこれを言っているんですよ、一人でも多くの人に笑顔になってほしいのかな」と笑います。
モデルの仕事は、交通費や洋服代などお金の持ち出しが多く、大変なこともたくさんあるそう。それでも大きな夢に向かって、菜桜さんと由美さんはいつも前向きでいます。最終目標は「海外のファッションショーに出ること」。とくに菜桜さんは、米国へ行ってみたい夢があるといいます。
実際に、菜桜さんがひたむきに夢を追いかける姿から勇気を与えられる人は少なくありません。由美さんによると、最近では、インスタグラムのダイレクトメッセージに中高生からのお悩み相談がよく届くそうです。
「そういうとき私は、障害があってもなくても諦めないでほしいって伝えるんです。頑張った時間は宝物になります。うまくいっていない今は、まだ途中だと思って頑張って。そうして『口に出せば絶対叶う』とお返事をした子から、実際に『叶いました』『菜桜さんのおかげで人生が変わった』と連絡を受けることも。菜桜が障害を持って生まれてきてくれたからこそ、私はこうして夢を追いかける子たちの人生が変わる瞬間に立ち会えるんだなって」
「障害を武器にすればいい」 個性のひとつに
菜桜さん誕生直後は、ダウン症であることが受け入れられず苦しんだこともあったという由美さん。しかし今では、菜桜さんがいたからこそ今の家族や自分がいると、胸を張って言います。そして、「障害を武器にすればいい」という強さも身につけました。
「メディアの力は大きくて、取り上げられる機会が増えたことでフォロワーが急増し、以前よりもさらにたくさんの応援の声が届くようになりました。その一方で、一部から心ない言葉が送り付けられることもあります」と由美さん。
「菜桜は身長が141センチしかないですし、もっときれいでスタイルのいい子がモデルをやったほうがいいじゃないかという声も、わからなくはないんです。でも、『障害を武器にしている』といわれたとき、それでもいいじゃないって思ったんです」
ダウン症の人が自分らしく生きるためには、障害も個性のひとつとして認められる社会となることが大切でしょう。しかし、「障害があるから」のひと言で門前払いをされてしまうことは、まだまだ多いようです。それでも由美さんは「諦めたら全部終わりです」と繰り返し言います。
「壁にぶつかって『モデルは無理なのかな』と思ったこともありました。でも、障害があるからといって夢を諦めるのはおかしいですし、菜桜はできないことが多いけれど、菜桜にしかできないこともあるって気づいたんです」
いつか世界のランウェイを歩くために……。菜桜さんと由美さんの努力と挑戦はこれからも続いていきます。
(Hint-Pot編集部)