仕事・人生
地方移住のリアル 50代で長野へ移住した元記者が感じたこと 「自身の“心の持ちよう”」
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耕作放棄地をどう活用するか 家庭菜園を作るためにひと苦労することも
「ご近所から野菜をもらったりするんでしょ?」
田舎暮らしを始めると聞かれる、定番の質問です。もちろん近くには“家庭菜園の先生”がいて、昨年も、初めて枝豆の栽培を始める際に種まきの時期や土作りなどを教わったり、トマトやジャガイモ、白菜など食べ切れないほどの野菜をいただいたりもしました。そんなときはどうするのかというと、こちらは千葉県にある実家の庭で採れたユズをお返しする程度の、ゆるいおつきあいで十分だろうと思います。
夏に育てた枝豆は近所の子どもたちに収穫作業を体験してもらったほか、秋に植えた野沢菜も想像以上に採れたので、どちらも周囲の方々にお分けすることができました。
田舎への移住を考える方のなかには、家庭菜園に憧れる人も少なくないと思います。私の場合、町内のある施設で管理もされていない荒れ果てた植栽を掘り起こして、畑に作り替えました。
しかし、畑はそう簡単に始められるものではないと考えたほうがいいかもしれません。国内各地で耕作放棄地の問題が深刻さを増してきているのはご存じの通りですが、立科町も例外ではありません。税制や農地管理に関する法律上の制約などもあり、使われていない畑は年々増加。都会には農作業をしたいという人がたくさんいるのに、皮肉な実情です。
なんとか土地の持ち主にたどり着けても、借りる交渉をして、雑草を刈り、土を掘り起こして畑にするにはトラクターや重機が必要なケースもあります。すぐに農作業を始められる土地でも、水が引かれていない畑は思いのほか多く、家や周辺で使える潅水設備が近くになければ、200リットルほどの農業タンクや雨水を貯めるタンクを設置する必要があります。立科町は雨が少ない地域なので、タンクには定期的に自ら水を運ばないといけません。
また、家庭菜園といっても都内の貸し農園ならせいぜい1坪(約3.3平方メートル)程度ですが、こちらは100坪(約330平方メートル)近い敷地の場合もあるので相当な覚悟も必要です。手入れを怠って荒らしてしまうと、病気や虫が発生して周囲に迷惑をかけることにもなりかねません……。