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仕事・人生

地方が抱える問題に「協力隊」が挑む 「空き家はあるのに住む家がない」 元記者の奮闘

公開日:  /  更新日:

著者:芳賀 宏

「空き家改修DIY ワークショップ」 専門家とともに楽しく「解体」や「左官」作業

 そこで考えたのが、リノベーションのプロセスをオープンにし、空き家改修の一例を示すこと。また、「うちも空き家を提供してもいい」という市民の方々のマインドチェンジにつながってくれることへの期待もあります。「地域おこし協力隊」での私の担当任務は産業振興ですが、移住も地域振興も連動して考えるべきというのが持論です。個人的にDIYが好きだったこともあり、ワークショップには微力ながら協力させてもらいました。

 こうした活動は、知ってもらわないことには伝わりません。自分なりのスキルをいかし、関心の高そうな「左官」の回の前にはプレスリリースを出してメディアに取材してもらうほか、町の公式SNSでも積極的な発信を試みました。

 ワークショップの舞台は、町が所有する教職員用住宅。2021年5月に着任した際、私が最初に約2か月住んだ物件です。5月なのに夜は震えるほど寒かった記憶がありますが、その理由はワークショップ第1回の「解体」ですぐに判明しました。

 畳を上げ床板をはずしてみると、断熱材などが一切なく、むき出しの地面が丸見え。冬にはマイナス10度を下回ることもあるというのに、これでは寒いのも当然でした。築年数が約37年ということで、聞けば昔の建物は同じような構造だったそうです。まずは床板をはずし、下地にスタイロフォームというスチロール樹脂の断熱材を組み込んでいきました。

 参加者の多くが、本格的なDIYは初めての経験。ビス(小さいネジのようなもの)を打ち込むためのインパクトドライバーなど、電動工具を手にするのももちろん初めてですから、最初はコツがなかなか掴めません。「ゆっくり、まっすぐに」などと教えていくと、参加者も徐々に慣れていくのが見て取れます。永田さんと秋山さんのプランや専門的な知識、建物の構造、防寒対策に必要な処置などに耳を傾け自ら実行する参加者の姿は、実に楽しそうでした。

「左官」の回で壁塗りに挑戦する参加者【写真提供:芳賀宏】
「左官」の回で壁塗りに挑戦する参加者【写真提供:芳賀宏】

「左官」の回では県内の職人さんをお招きして、実際に壁の塗り方を教えていただきました。DIYですからホームセンターで買えてすぐに塗れる材料を使用しましたが、見るとやるとでは大違い。参加者はコテ使いに悪戦苦闘しつつ、修正してくれるプロの技術を目の当たりにして感嘆の声を漏らします。一方で「自分たちも初めての経験でした」と、職人さんにもワークショップを楽しんでもらえたようです。