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宝塚の同期は「人に見せたくないところを一番見せている人」 87期のふたりが語った絆

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・瀬谷 宏

インタビュアー:竹山 マユミ

晴華さんが寄せた信頼 「同期ならすべて受け止めてくれる」

同期で最後の退団者となった綾月さん(左)を晴華さんはねぎらった【写真:桝元清香】
同期で最後の退団者となった綾月さん(左)を晴華さんはねぎらった【写真:桝元清香】

竹山:同期で一緒に出られる貴重な初舞台を経て、みなさんそれぞれの組に分かれていきました。その後、連絡は取り合っていらっしゃったのですか。

晴華&綾月:あまりなかったですね。

竹山:組が違うと、退団されるまでの接点はなかなか取りづらいのかもしれませんね。

晴華:同じ劇場の稽古場にいて、隣同士とかですれ違ったらもちろんあいさつをしたり、ひと言、ふた言交わしたりするのですが、やはり組が違うとどうしてもスケジュールが合わないですし、東京に行っていたり、全国ツアーを回っていたりするので、同期で集まろうというのはほとんどなかったです。

 だからこそ、誰かが辞めるというときになると、お稽古中だけど休憩になったからちょっと楽屋に行ってくるとか、ちょっとでもやっぱり顔を見ておきたいという思いはすごくありました。

竹山:宝塚のみなさんにとって、同期の絆というのはどういう感じなのですか。おふたりを見ていて、本当に四六時中、一緒にいらっしゃるのではと思えるほどなので。

綾月:同期って、人に一番見せたくないところを一番見せている人だったんですよね。

晴華:大泣きしているときも、何かを言い争っているときも、誰かがちょっとミスしちゃったときでも、誰かがすごくうまくいったときでも、みんなで喜んだり悲しんだり、怒ったり……。やっぱり、あの時代を2年間ともに過ごしてきたことが一番大きい。何があっても絶対大丈夫、みたいな。今、困っているから助けてと言ったら、この人なら必ず助けてくれるしすべて受け止めてくれる……そんな感じなのが同期なんです。

綾月:私の思い込みかもしれないけど、普通のお友達でこれを言ったらもしかしたら縁が切れるかもしれないっていうことも、同期に言ったとしても縁が切れることはないと思っているんですよ。だから、絶対切れない絆みたいのはあります。ちょうど多感な時期に親元から離れて、親よりも長い時間一緒にいた子たちなので、本当にこんなに自分のことがわかる人っているんだって思いました。

竹山:たとえば、学生時代のクラスメイトや部活の仲間などと一緒に過ごすという経験は誰にでもあるかなと思うんですけど、やはりそれとはまた全然違うんですね。

綾月:全然違いますね。

晴華:あの頃の音楽学校時代の同期って、文字通り朝から晩まで一緒なんですよ。ときには朝から次の日の朝まで、もう本当に24時間一緒にいるので……。

竹山:これは、同じ目標に向かって同じ努力、同じ苦しみをきっと味わっているだろうという共感があるんでしょうかね。

晴華:絶対的な連帯感と信頼というのは、やっぱり2年間一緒に過ごしてきたから大丈夫、みたいなところからくるのだろうなと。もちろん、合格して最初に会ったときからみんなこういう感じだったわけではないと思います。けれど、音楽学校のしきたりを学んでいったり、芸事に邁進していったりするなかで、すごく心が鍛えられる。それは同期の力がすごく大きくて、乗り越えられたのはやっぱり同期がいたからだと思います。

綾月:音楽学校時代って世間から隔離されているし、親にも言えないことが出てくるんですよ。中学生や高校生が今日学校でこういうことあったよ、と親に話すことがあると思うのですが、そういったことも言ってはいけないというか。

晴華:それは、たとえ親であっても宝塚に対する夢を壊さないためという意味もあって……。

綾月:そうすると、親も知らない、同期の中でしかわかり合えないことができるんです。すると、助けてくれるのはこの42人しかいない、味方はここにしかいないという空間にますますなっていくんだよね。

晴華:どの学年、どの期もやっぱり「同期って特別な存在」とおっしゃいますし。それでも、私たちの期は同期会もしているし、特別かな。

綾月:仲いいよね。私は同期のなかで辞めたのが最後だったんですよ。だから、同期で連絡を取り合い、結婚の報告や、子どもが生まれてママ友として集まっているのを見るといいなって思っていました。

晴華:同期会のなかでも、さまざまなコミュニティがあります。だから、辞めたまゆみちゃん(編集部注:綾月さんの愛称)には「OG同期へようこそ」みたいな感じでしたね。