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仕事・人生

宝塚は「楽しく充実していたから卒業できた」 87期のふたりが語った退団のタイミング

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・瀬谷 宏

インタビュアー:竹山 マユミ

副組長は「楽しかった」という綾月さん 「組全体を見ようという心持ちでいられた」

副組長の役職に就いていたときの思い出を語った綾月せりさん【写真:舛元清香】
副組長の役職に就いていたときの思い出を語った綾月せりさん【写真:舛元清香】

竹山:綾月さんは副組長という立場もご経験なさっていました。ひとつの組をまとめていらっしゃるなかでは、組長さんと副組長さんがいらっしゃいますよね。そしてトップスターさんたちもいらっしゃる。組長さんや副組長さんというのはどんなお仕事をなさるのですか。

綾月:学級委員と補佐みたいな感じですね。組織というか会社なので、歌劇団の経営者側の上層部の方々と、生徒と呼ばれる私たち演者の橋渡しじゃないですけど、上の方たちが知らないような組子の頑張りなどを伝えています。あとは、組で起こっている問題などについてどう改善していきましょうか、みたいな話もします。

 そのうえで、ペアになった組長がどなたかというのが一番大きいと思います。私がペアを組んだ憧花ゆりの(86期、元月組娘役)さんという組長さんはものすごくしっかりしている方で、今は宝塚ホテルの支配人をされています。だから、私はあまりやることがなかったんですよね。みなさんは「大変だったでしょう」とか言ってくださいますが、ほとんど憧花さんがやってくださったので、全然大変ではなかったです。

竹山:お支えしていて心強く感じていらっしゃったと思いますが、晴華さんからご覧になっていかがでしたか。

晴華:すーさん(編集部注:憧花さんの愛称)は“しっかりの塊”だから、すごく想像できます。でも、だからってまゆみちゃん(編集部注:綾月さんの愛称)は「もう組長さんにおまかせします」という感じではないですし、とても気が利く子です。

竹山:組長さんや副組長さんはやはり信頼が厚く、本当にお世話することが向いているという方が就任するのですか。

綾月:それもあるかもしれませんが、学年が上でも役付きのスターさんみたいな方などもいらっしゃるので、そちらとの両立は難しいです。私は2年で辞めてしまいましたが、どちらかというと役職に就いたら長く在団していることのほうが多いので、いろいろ制約が付くことの了解を求められますし、組子を管理するうえで組長と副組長は寮にも入らなくちゃいけないんです。

竹山:やはり大変でしたか。

綾月:いえ、すごく楽しかったです(笑)。組のなかで、組長や副組長はちょっと隔離された「管理部屋」と呼ばれるところにいるんですよ。カーテンで仕切られているから、外の様子とかあまりわからない。でも副組長なのをいいことに、みんなと話をしにいったり、いろんな子たちとコミュニケーションとったり……。以前より組全体を見ようとする心持ちでいられたのは、役職が付いたことのおかげかなと思っているんです。

竹山:ご自身が退団なさるタイミングは、どうやってお決めになったのですか。

綾月:すごく勝手かもしれないのですが、龍真咲さんを送り出したらいつ辞めてもいいかなと思っていました。ただ、管理職をいただいたので「見送りました、はい辞めます」みたいなのは、さすがにちょっと無責任かなと。ちょうどそのタイミングでトップスターが珠城りょう(94期、元月組トップスター)ちゃんに変わり、組が新体制になったので少し落ち着くまではいようというのはありました。

 そして3~4公演が終わり、1期下の光月るう(88期、元月組男役)ちゃんが本当に管理職に向いている子だと思い、本人もたぶんやりたいんだろうなっていう感じがあったので、この子だったら次をお任せできるなと。その時期って、自分の宝塚人生がすごく楽しかったんですよ。もう“お腹いっぱい”だし、組も落ち着いているし、るうちゃんもいるし。そのときに「もういいかな」って。

竹山:楽しいから卒業できるというお気持ちだったのですか。

綾月:そうですね、充実していました。今まで退団されていった方のなかには、宝塚があまり合わなかったという方もいらっしゃったと思いますが、私は嫌いになって辞めるのだけは絶対に嫌だった。楽しいからこそ、今がその時期だろうなと思ったんです。