仕事・人生
宝塚は「楽しく充実していたから卒業できた」 87期のふたりが語った退団のタイミング
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インタビュアー:竹山 マユミ
「下級生のときに上級生にもっと相談すれば良かった」と晴華さん
竹山:おふたりとも、充実しているときに辞めようと思ったという共通点があるのですね。本当につらい、この壁を越えられそうにないと思ったときに、どなたか同期の方に相談はしたのですか。
綾月:本気で辞めたいと思っているときって、誰にも言わない気がするんですよね。私は自分が辞めるときは誰にも言っていなかったです。辞めると自分で決めたあとに、プロデューサーにも言いました。
竹山:それはなぜですか。
晴華:どうしてだろう……。誰かに言ってしまうと(辞めるのを)止められちゃうかも、って思ったのかな。私は、誰から伝えていくかという優先順位が決められなかったというのもあります。誰かには言ったけど、誰かには言っていないというのが嫌だった。今思えば、下級生のときに辞めようか悩んでいたことや、役作りで壁にぶつかっていたことなど、もっと上級生に相談すれば良かったなってすごく思います。
竹山:上級生に相談するのは難しいことだったのですか。
晴華:下級生のときに役が付き、いろいろご指導を受けるなかで、「できないとわかっているなら、人に聞く前にもっと自分が頑張らなきゃいけない」と言われたことがあったんです。それがずっと自分のなかに残っていて、新人公演でお世話になった本役さん(編集部注:最初にその役を与えられた人)とかにはなかなか聞けなかった。
ヒロインをやったときも、自分は質問を投げられるほどまだまだ向き合ってないんじゃないか、意見が聞けるほどのレベルに達してないんじゃないかってすごく思っていたんです。それはもったいないことでしたね。できないならできないなりに、もっと一から十まで全部ぶつかっていけば良かったなって思うので、下級生たちにはぜひトライしていってほしいです。
綾月:その気持ち、すごくわかる。かおり(編集部注:晴華さんの愛称)は人に頼るのが苦手で、「そこは頼ればいいのに」ってところをひとりでやろうとするんですよ。この間、それこそ20年以上ぶりに「輝け!しながわジェンヌ」で一緒にやったとき、甘えるのがうまくなったなって思いました(笑)。
晴華:それはそうかも。宝塚を卒業して外の世界へ出たときに、力が抜けたんですよ。私は“娘役ポリシー”がすごく強いほうだったと思うんです。宝塚の娘役はこうあるべき! と、自分のなかで決めたことを曲げるのはあまり好きじゃなかった。それが、卒業していろいろなことが自由になったときに一瞬、自分を見失ったんですよね。今まで自分が好んでやってきたことをこの先もやっていくかとなったら、きっとそれは通用しない。自分の意見はどこにあるんだろうと、まず本当の自分探しみたいなところから始まりましたね。
<次回に続く>
栃木県出身。6月7日生まれ。愛称は「かおり」。2001年に87期として宝塚歌劇団に入団。宙組公演「ベルサイユのばら2001-フェルゼンとマリー・アントワネット編-」で初舞台。その後、雪組に配属され「ポップスコッチ」でヒロインのひとりに抜擢。「送られなかった手紙」でバウホール単独初ヒロイン。「さすらいの果てに」でバウホール公演3度目のヒロインを演じ、「霧のミラノ」「ベルサイユのばら-オスカル編-」で2度の新人公演ヒロインを演じた。ショーのパレード冒頭のソロを歌う“エトワール”を何度も務めた歌姫。2011年、「仮面の男」大女優役で退団。退団後は休業期間を経て、ディナーショーやコンサートなどに出演し、歌手として活動している。2023年、「輝け!しながわジェンヌ2023」で綾月と共演。
千葉県出身。10月19日生まれ。愛称は「まゆみ」「ファービー」。2001年に87期として宝塚歌劇団に入団。宙組公演「ベルサイユのばら2001-フェルゼンとマリー・アントワネット編-」で初舞台。その後、月組に配属され男役として活躍。「エリザベート -愛と死の輪舞-」「ME AND MY GIRL」「風と共に去りぬ」などの作品に出演し、2016年に月組副組長就任。2018年に「カンパニー -努力(レッスン)、情熱(パッション)、そして仲間たち(カンパニー)-」の有明清治郎役、「BADDY-悪党(ヤツ)は月からやって来る-」で退団。退団後は、2018年「現代能『陰陽師 安倍晴明』~晴明 隠された謎…~」(野村萬斎主演)、2021年「火の鳥 異形編」、2022年「レ・ミゼラブル~惨めなる人々~」、2023年「輝け!しながわジェンヌ2023」「スター誕生2」など舞台を中心に活動している。
CHICACO 2023
【日時】大阪公演(specialチーム):5月13日(土)~14日(日)
【会場】一心寺シアター倶楽
【出演】specialチーム:池上季実子、円堂耕成、綾月せり、中村優希、三上竜平、田中愛実、大谷葉月、山中友太、富山真有、大鶴義丹 ほか
【問い合わせ】舞台「CHICACO 2023」公式サイト
(Hint-Pot編集部・瀬谷 宏)
(インタビュアー:竹山 マユミ)
竹山 マユミ(たけやま・まゆみ)
明治大学卒業。広島テレビ放送のアナウンサーを経てフリーアナ、DJとして各テレビ局やラジオ局で番組を担当。コーピングインスティテュート コーピング認定コーチ。宝塚歌劇団は生まれる前から観劇するほどの大ファン。