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「けがを理由に諦めないで」 過酷日程に苦しんだ宝塚元娘役が退団後に見つけた新天地

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・瀬谷 宏

インタビュアー:竹山 マユミ

けがに悩まされた宝塚歌劇団での日々を振り返った小田島夏希さん【写真:舛元清香】
けがに悩まされた宝塚歌劇団での日々を振り返った小田島夏希さん【写真:舛元清香】

 華やかなステージで繰り広げられる迫真の演技や華麗なダンス。ファンにとっては宝塚歌劇団を観劇するうえでの醍醐味とも言えますが、厳しいスケジュールのなかで、タカラジェンヌはけがや自身の体調と向き合いながら最高のパフォーマンスを模索しています。OGたちの視点からクローズアップする「Spirit of タカラヅカ」は今回、退団したあとにピラティスやジャイロトニック(R)などの指導者資格を取得し、現役生の体のケアなどの指導も行っている小田島夏希さんが登場。在団時の苦労や体のケアの重要性など、宝塚をこよなく愛するフリーアナウンサーの竹山マユミさんが伺いました。

 ◇ ◇ ◇

宙組誕生の年に入団 社会人としてのあり方も教えてくれた上級生への感謝

竹山マユミさん(以下、竹山):宝塚に入団されたのは、宙組が誕生した年ですね。ご自身の初舞台、組としても初めてのお披露目をするときだったと思いますが、当時はどのような雰囲気だったのでしょうか。

小田島夏希さん(以下、夏希):私たちは初舞台生なので、劇団に伺うのも初めてでしたし、上級生のみなさんとご一緒させていただくのも初めてだったので、毎日必死でした。あとになってそのときの宙組の上級生の方々とお話をする機会があって知ったのですが、みなさんもいろいろな組から宙組にいらして、初めて一緒になる公演だったので、上級生は上級生で大変なこともおありだったようです。

 でも私たちからするとそれが初めて見た「宝塚歌劇団」だったので、そのときの様子は何が大変なのかもわかっていなかったですし、上級生の方々はすべてに慣れていらっしゃるように見えました。とにかく私たちは私たちのことだけでいっぱいいっぱいで、毎日ご注意をいただきながら必死に過ごしていました。

竹山:そんな初舞台、プロとしてのご指導も受けるなどしましたか。

夏希:今思えば当たり前なんですけどね。やったことがないところに入ってきた私たちなので、できていないところがいっぱいあって当たり前。できていないことを「できていない」「違うよ」って言ってもらえるのって、本当にありがたいことじゃないですか。スルーされてしまい、できていないことで仕事がなくなることもあるのが一般的だと思うので。その時点で注意して教えていただけたことを思うと、やはり劇団という温かい集団の中にいたんだなと今は思います。

竹山:たとえば、どういうことをきちんと教えてくださったり、指摘してくださったりするのですか。

夏希:どんなことを注意していただいたかは、以前のことすぎてなかなか詳細には覚えていないのですが……。たとえば公演で着用する衣装の調整のため、衣装部さんに伺う際のスタッフのみなさまに対するごあいさつの仕方や、生徒以外の他部署のスタッフさんに対しての接し方などにもいろいろご指導いただきました。一番大切にご指導いただいたのは、どなたに対しても感謝を持ってごあいさつすることだったと思います。

竹山:芸事についてはもちろんですが、社会人としてのあり方も教えてくださったということですね。

夏希:そうだったと思います。宝塚のお稽古場では、セット転換や小道具の準備などを下級生が担当することがあるのですが、お稽古のスムーズな進行の仕方なども教えていただいたように思います。お稽古場でそういう経験をすることで、本公演中の大道具さんや舞台進行の方のお仕事のありがたさも知りましたし、舞台を作るうえで必要なことがこれだけあるんだよということを、たくさん学ばせていただいたと思います。

竹山:そんななかでも初舞台生のときは、みなさんで一致団結してラインダンスを踊らなくてはいけないですから、結束もすごく強まりますよね。

夏希:そうですね。先日も今年の初舞台公演を同期と一緒に観させていただいたのですが、すごく感慨深かったです。その学年の同期生全員で出演するのは、初舞台のラインダンスが最後なんですね。初舞台が終わるとみんな各組に配属されるので、組が分かれると本当に会わなくなります。だから「みんなでできるのは最後なんだよ」っていろいろな方がおっしゃっていましたし、確かにそうだなって。同期のなかでは大切な思い出になっていると思います。