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宝塚時代には「得られなかった感動」 元娘役が新天地で再確認した“けがの功名”の意味

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・瀬谷 宏

インタビュアー:竹山 マユミ

未来のタカラジェンヌ候補に求められるのは「うまい下手より“宝塚らしさ”」

娘役時代は「夢の世界をつくる」ことを意識していた小田島夏希さん【写真:舛元清香】
娘役時代は「夢の世界をつくる」ことを意識していた小田島夏希さん【写真:舛元清香】

竹山:夏希さんはそういったトレーナーとしての一面もありながら、未来のタカラジェンヌさんたちにもレッスンされているのですか。

夏希:私のスタジオはボディワークスタジオなので、宝塚受験スクールではまったくないのですが、スタジオに来てくださる受験生だけでなく、ほかのスタジオなどで担当させていただくダンスクラスに受験生がいらして、姿勢やボディラインなどに関して個人的にご相談をいただいたときには、もちろんそれぞれにアドバイスをしています。宝塚受験の場合、姿勢やそれを含む第一印象、脚の形、スタイルといった要素も審査対象として評価されるようですので。

竹山:タカラジェンヌになるには、どのようなことがポイントになってくるのでしょうか。

夏希:こればかりは本当になんとも言えないんですよね。「どうしてこの子が入れなかったのだろう」というショックはよくあります。一方で、誰が見ても受かるでしょうと思われている子がその通り受かることも。いつの時代も、どの先生もおっしゃるのは、どんなに上手でも“宝塚らしくない”と入れないということなのかなと。うまい下手より“宝塚らしさ”なのかもしれませんね。宝塚の舞台に雰囲気が合いそうな方というのはあるようです。1次試験は外見で審査されてしまうので、やっぱり“宝塚らしい”と見える容姿や雰囲気は大切なのかなと思います。

竹山:夏希さんもそのようなことを意識して受験なさったのですか。

夏希:私の場合は本当に何もできておらず、まったく準備が間に合っていなかったので……。本当に、今だったら入れなかっただろうなと思います。受験するときは宝塚や娘役さんに憧れしかなかったですし、入ってからの厳しさとかも何も知らず(笑)。夢にあふれていたので、そう見えたかもしれないなと思います。

竹山:退団された今でも本当にキラキラ輝いていらっしゃいますよね。そうなれる秘訣があったら教えていただけますか。

夏希:そんなふうに見えているとしたらとてもうれしいです。俳優やダンサーとして舞台に出演するお仕事では、踊ること、表現することで、ご覧くださった方々から「感動した」「元気をもらった」などと感想をいただけることもとても幸せなことだったのですが、トレーナーとして「どんな治療に行っても取れなかった痛みがなくなりました」といった言葉をいただいたときの感動は、今まで感じたことのないとても大きなものでした。

竹山:また違う喜びを見つけたということなのですね。

夏希:トレーナーというお仕事にめぐり合うことができたおかげで、昨年には主宰するボディワークスタジオを目黒駅近くにオープンすることができました。また、別のスタジオでのダンスクラスや、宝塚OGの後輩、同期生のコンサート、ライブの振付やステージングなど、ここ数年はバランス良く舞台に携わるお仕事などもいただいています。それがどのお仕事も楽しく取り組むことができている理由かもしれないです。私は本当に素敵な方々に恵まれて、支えていただいていると感謝することばかりです。

竹山:ご自身の経験が原点であり、そのうえで、多くの方に長く輝いてほしいという思いなのですね。

夏希:それはいつも思っています。みなさまにいつまでも輝いていただきたいです。宝塚を退団してからいろいろな方とお話しするなかで、宝塚はとても華やかに見える世界だったんだということも感じました。でも、そう見える分、本当に大変なこともたくさんあったと思います。そういう意味では大変なことに慣れることができたのかなと思っています。

竹山:個々ももちろんそうですけど、それをみなさんで乗り越えていかれるということですね。

夏希:ひとつの舞台を作り上げるには、もちろん個々の役割を果たすことは大前提ですが、さらに「集団」でひとつのものを作り上げなければなりません。一度、ひとつの組に配属されると、ほぼ同じメンバーで公演のみならず、集団生活をずっとしていくことになります。その集団生活が苦手な方もいらっしゃいますし、私もそんなに得意ではなかったですが、やらざるを得なかったですし(笑)。今となっては良い訓練ができたなと思います。