自分自身を実験してみたかった

竹山：専科を経て、星組のトップスターに決まったときは、どのような気持ちでしたか。

北翔：当時の星組って“ピラミッド”がしっかりできていたので、自分がなぜここの組に行くんだろうとか、行ったときにいろいろスムーズにはいかないかもしれないというのは理解していました。なので、いろいろな意味で覚悟というか、腹をくくっていった部分はありましたね。

竹山：では、星組でトップスターの話が来たときには、覚悟はすぐに決まったのですか。

北翔：いや、3回ぐらい断りましたね（笑）。自分が専科にいたときは、別にトップスターになりたいわけではありませんでした。自分がどんなポジションでも、男役を極めるという部分に関しても、辞めるときに自分が納得できていればいいと思っていましたから。それに、元をたどれば私は劣等生からスタートしていますから、私からすれば誰もトップスターになることを夢見ていないわけですよ。ただ、自分はどこまでできるのか、自分自身を実験してみたかっただけなんです。

竹山：環境を楽しむことができる、努力をし続けることができるというのは、何がそうさせているのですか。

北翔：やはり音楽学校のときに、自分ができないと思っていたことを、やればやっただけ成果に出るのが目に見えてわかったからでしょうね。挑戦することが楽しくてしょうがないというか。あの頃、「自分の趣味は挑戦です」みたいなことを言っていましたし。

　なんでもとりあえずやってみて、それが自分の肌に合っているかどうか。逆に、まったくダメだったものだってあります。でも、これはいけるぞって手ごたえを感じたときに、その道のプロというか、一流というには足元にも及ばないけれども、そこに近づこうとする稽古はしてみようかなって思っていました。

竹山：比較をするのは常に自分ということだったのですね。

北翔：そうですね。実は、私にはライバルという存在はいないんです。ビリからスタートしているわけですから、競争相手なんていないんですよ。頑張れば、もうこれより下には下がらないみたいな感じでしたから。

＜次回へ続く＞

（Hint-Pot編集部・瀬谷 宏）

（インタビュアー：竹山 マユミ）