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宝塚元男役トップ・北翔海莉さんが決めていた“辞め時” 「若手にチャンスを与えないと…」

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・瀬谷 宏

インタビュアー:竹山 マユミ

男役トップスターに就任した当時の思い出を語った北翔海莉さん【写真:冨田味我】
男役トップスターに就任した当時の思い出を語った北翔海莉さん【写真:冨田味我】

 特定の組に所属しない「専科」を経て星組男役トップスターに就任という、宝塚歌劇団のなかでも異色の経歴を持つ北翔海莉さん。覚悟を決めて就任したトップ時代は「己の精神との闘い」を貫き、妥協なきステージづくりに力を注ぎました。OGたちの視点からクローズアップする「Spirit of タカラヅカ」の第2回は、今年芸能生活25周年を迎えた北翔さんが追求したトップスターのあり方について。最初から決めていたという“辞め時”や組をまとめるために心がけたことなど、宝塚をこよなく愛するフリーアナウンサーの竹山マユミさんが伺いました。

 ◇ ◇ ◇

欠かさなかった下級生への声かけ 「昨日よりできていたことを褒めてあげていた」

竹山マユミさん(以下、竹山):専科時代に星組トップスター就任の打診を受け、最初は断ったとお聞きしました。それでも覚悟を決めて移籍されたとき、どのようなトップスターになろうと思っていましたか。

北翔海莉さん(以下、北翔):私は初舞台を踏んでから星組に行くまでの間、17人のトップスターさんの後ろでやってきました。17人のトップさんの背中を見てきて、いいものも、そうでないものも自分の目で判断してきました。とにかくその17人のトップさんからたくさんのことを学ばせていただいたので、自分が星組に行ったときにはそのいい部分をうまくチョイスして、端っこに立つ組子の1年生まで生き生きと諦めることなく、舞台で生きることができる環境をいかに作るか、いつも考えていましたね。

竹山:ご自身の経験から、いつもその目線をしっかりと持っていたのですね。

北翔:トップさんって、本当にいろいろなタイプの方がいらっしゃいます。私についてこいってひとりで行っちゃうトップさんもいます。でも私の場合は、自分が劣等生だったときの気持ちがわかるから、できなくて置いていかれる人の気持ちもよくわかるんですね。そういうことがないよう、常に1年生に対しても毎日のように声をかけていましたし、昨日より今日できていたということをきちんと褒めてあげていました。ちゃんと見ているよ、いつも見ているよって伝えてあげることが大事だなと思っていました。

竹山:初舞台を踏んだばかりのみなさんがトップさんから褒めてもらえる、見ていただいていると感じるのは大きな励みになりますよね。

北翔:私がトップのとき、102期生の初舞台の公演を担当したのですが、そのときも一緒に“100人ロケット”みたいなのがありました。初舞台生なんて、何もわからないまま一緒に稽古場に来て、私がガンガン言うから「なんて怖いトップさんなんだ」ってきっと思っていたでしょうね。

 でも、研18(18年目)だろうが研1(1年目)だろうが、同じように劇団からお給料をもらって、同じ場面に、同じプロとして出るという条件だから、みんながうまくできるまで一緒にやりました。人にもよりますけど、だいたいトップスターさんって下級生の稽古には立ち会わないんですよ。ほかの人にそういう指導のようなものを任せていくトップさんは多いんですけど、私はそれができないタイプでしたから。

竹山:組の雰囲気も変わっていきましたか。

北翔:そうですね。最初に行ったときはやっぱり“よそ者”が来たなという感じでしたけれど。そのなかでも自分を認めてもらおうと思って挑んでいたわけではなくて、自分の姿を見てついてきてくれる子がいればいいや、っていう感覚だったので。

竹山:あのとき、相手役のふうちゃん(妃海風、元星組トップ娘役、95期)が、本当に北翔さんのことが大好きで尊敬しているというのが、舞台だけではなくいかなるときでもすごく伝わってきていました。

北翔:そうでしたね。もう、ふうちゃん自身が何か“幸せオーラ”を出してくれると、私も幸せな気持ちになりましたね。彼女はヒマワリみたいな人なので。彼女に助けられたことはたくさんありましたね。