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仕事・人生

宝塚元男役トップ・北翔海莉さんが決めていた“辞め時” 「若手にチャンスを与えないと…」

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・瀬谷 宏

インタビュアー:竹山 マユミ

つらくても「立ち止まったらそこで終わり」 己の精神との闘いだったトップ時代

トップスター時代は自分を貫いた北翔海莉さん【写真:冨田味我】
トップスター時代は自分を貫いた北翔海莉さん【写真:冨田味我】

竹山:つらかったときや困難に直面したとき、北翔さんはどう乗り越えましたか。

北翔:正直、もうこのまま死んじゃえと思ってしまうくらい自分の居場所も見つけられなくて、苦しかったこともありました。でも「立ち止まったらそこで終わり」とも思っていたのです。苦しいなか、自分自身がどこまでやれるのかという己の精神との闘い、弱い自分との闘いみたいなもので、逆に上を向いて「見てろよ」って神様に向かって言ってみたり……。そんなことをやっていましたね。

竹山:常に自分との勝負ということだったのですね。

北翔:そうなんです。周りのことなんてどうでもいいんです。他人の目は関係ない。自分自身がどこまでできるか、なので。みなさん、他人の目ってすごく気にしますけども、それって自分が想像していたものともまた違うし……。そんなことを考えたり、想像したりして自分が心を痛めるくらいなら、それよりも自分自身がどう進むかを考えたいという感じです。

竹山:それは今、組織のなかなどで悩んだり、苦しんだりしている人たちへの大きなエールになりますね。そこに共鳴してくれる人たちがいれば、またエネルギーになりますものね。

北翔:本当にありがたいことに、私を応援してくださるファンの方って「類は友を呼ぶ」じゃないですけど、似たような人たちが多いんですよ。会社に勤めていても、どんな仕事に就いていても、やっぱり納得いくまでやるような人たち、突き詰めてやるような人たちが私を支えてくださっていました。

 そういう部分でも、このファンの人たちの憧れのポジションに常にいてあげなきゃいけないと思うし、「みっちゃん(北翔さん)はここまでやっているから、私たちだってここまでできるんだ」というものを発信しなきゃいけないポジションでした。だからこそ、私は落ちたらダメだなと思っていたんですよ。

竹山:そのモチベーションは本当に素晴らしいですね。宝塚をお辞めになってからもいろいろな舞台にご出演されていますが、今もそういったマインドはお変わりないのですか。

北翔:そうですね。今は25周年の公演が控えていますが、自分が結婚するってなったときに、芸事は一度辞める覚悟でした。人間ってなんでも二兎は追えないと思うんです。結婚したいし、仕事もやりたいし、子どもも欲しいなんて難しいことですから。私は元々、二兎は追わないタイプで、やりたいことは一本に絞るんです。

 そう覚悟を決めて、そういう環境のなかで突き進んでいた私に、夫が「みっちゃんはやっぱり舞台降りたらあかんと思う。やっぱりステージに立っている姿を見たいから、もう一回ステージに出たら」って言ってくれたんです。だから「ちょっと挑戦してみてもいいですか」って言ったら、周りがみんな協力してくださった。子どもが生まれたときも子育てに専念しようと思っていたので、「ちょっと集中して子育てしますんで仕事はしません」って言っていました。みんな、悲しそうな顔をしていたんですけど、やっぱり気がついたら……。

<次回に続く>

◇北翔海莉(ほくしょう・かいり)
千葉県出身。3月19日生まれ。愛称は「みっちゃん」。1998年に84期として宝塚歌劇団に入団。宙組公演「エクスカリバー/シトラスの風」で初舞台。組回りを経て月組に配属。2012年7月に専科へ異動。2015年5月、星組男役トップスターに就任。代表作にブロードウェイミュージカル「ガイズ&ドールズ」、ディズニー×宝塚「LOVE&DREAM」、「こうもり/THE ENTERTAINER」など。2016年11月、「桜華に舞え/ロマンス!!」をもって退団した。2017年4月に北翔海莉1stアルバム「Alrai~エルライ~」をリリースし、「ALL JAPAN TOUR 2017」を開催。ミュージカル「パジャマゲーム」、「ふたり阿国」、「うたかたのオペラ」、「海の上のピアニスト」などの作品で主演。「銀河鉄道999 THE MUSICAL」、「アルジャーノンに花束を」、「CLUB SEVEN ZERO ll」、藤間勘十郎文芸シリーズおよび現代能「マリー・アントワネット」に出演するほか、数々のコンサートやディナーショーにて活躍中。2018年に俳優の藤山扇治郎と結婚。2020年に長男を出産した。今年、芸能生活25周年を迎え、記念公演「THE 北翔まつり」とディナーショー「ザッツ☆北翔テイメント」を開催する。

◇出演情報
北翔海莉芸能生活25周年記念公演「THE 北翔まつり」
【日時】2023年9月14日(木)午後6時30分、15日(金)正午/午後4時、23日(土・祝)午後1時/午後5時、24日(日)正午/午後4時
【会場】国立文楽劇場(大阪府)、浅草公会堂(東京都)
【演目】1部:茂林寺文福 作「先づ健康」(補綴/川浪ナミヲ、演出/帆足敏)
2部:「THE 北翔まつり」(構成・演出/北翔海莉、振付/山村友五郎)
【出演】北翔海莉、風莉じん、星吹彩翔、亜聖樹/小林功、川浪ナミヲ/美治、藤山扇治郎
【金額】1万1000円(全席指定、税込)
【お問い合わせ】北翔海莉事務所(info@artistjapan.co.jp)


Arrow Tazz Orchestra~ジャズ&宝塚 Vol.3
【日時】2023年10月29日(日)午後3時
【会場】梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ(大阪府)
【出演】北翔海莉、沙央くらま、アロージャズオーケストラ(AJO)、アローシンガー:鳴海じゅん
【金額】一般8000円、学生6000円(全席指定、税込)


北翔海莉ディナーショー「ザッツ☆北翔テイメント」
【日時】2023年12月19日(火)正午/午後5時15分(お食事、ショー)
【会場】東京會舘 丸の内本館3階「ローズ」
【出演】北翔海莉、大真みらん、漣レイラ
【演出・音楽】岡田敬二、佐伯準一
【金額】3万9000円(税込、全席指定、料理・飲み物・サービス料含む)

(Hint-Pot編集部・瀬谷 宏)

(インタビュアー:竹山 マユミ)

竹山 マユミ(たけやま・まゆみ)

明治大学卒業。広島テレビ放送のアナウンサーを経てフリーアナ、DJとして各テレビ局やラジオ局で番組を担当。コーピングインスティテュート コーピング認定コーチ。宝塚歌劇団は生まれる前から観劇するほどの大ファン。