仕事・人生
英国では田舎暮らしがステータス 東京から人口1200人の島に移住した日英写真家
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インバウンド受け入れ強化で、移住から3年間は多忙な日々に
東京では本業のカメラマンのほかに英会話の先生や翻訳などをやっていましたが、漠然と「田舎に行くとそういう仕事などはないだろうな、どうしようかな」と考えていたというトムさん。しかし、それは大きな間違いだったのです。
大崎下島に移り住んだ2015年、日本は訪日外国人の受け入れを強化し始めた頃でした。日本政府観光局(JNTO)によると、当時は過去最多の1973万人(2015年)の外国人観光客を受け入れていました。
「瀬戸内海、四国などは外国人観光客向けに冊子やウェブサイトといった情報発信のコンテンツ作りをしていました。東京の広告代理店などが大きなプロジェクトとかを請け負っていましたが、実際にライター、カメラマン、コーディネーターなどを瀬戸内へ送るとなると費用がかさむ。でも僕の場合はすでに現地にいて、ひとりで全部できるので、仕事がどんどん増えました。実際、移住してきてからの3年間は人生で一番忙しかったんです」
そう苦笑するトムさんでしたが、その忙しさと引き換えに得た報酬で、大崎下島の伝統的建造物群保存地区の一角にある古民家を手に入れることができました。今では2年前に生まれた息子・ウィルくんと家族3人で暮らしています。
田舎暮らしはステータス 日本で実現
コロナ禍の影響が薄れた今年、外国籍の客船が初めて大崎下島に寄港しました。フランスのクルーズ船「ル・ソレアル」の乗客約250人が人口1200人の大崎下島を訪れ、日本遺産の御手洗地区などで散策を行ったそうです。
「このあたりは歴史的に船乗りなど外の人が来て栄えた場所だから、新しい人たちを受け入れるような文化や体制が根付いているんです」
英国に住むトムさんの両親も、毎年のように訪れるのだそう。「来ると2か月くらい長く滞在して、いろいろと楽しんでいますね。英国の文化では、お金を貯めたら田舎に引っ越すのがステータス、理想の生活という感じなので」
移住直後に極めた多忙も落ち着き、2019年にはスコーンと紅茶のお店もオープンしました。妻の真伊さんの妊娠中に研究を重ねて、開店当初よりさらにおいしく焼けるようになったそうで、スコーンはトムさんが手がけています。
自身のもうひとつの母国で“理想”といわれる生活を日本で手にしたトムさん。穏やかな瀬戸内海で、憧れていた田舎暮らしを満喫しています。
英国人の父と日本人の母を持ち、東京生まれ。6歳で英国へ家族で移住。フリーのカメラマンとして2009年に来日。2013年に真伊さんと結婚し、2015年に広島県の大崎下島に移住。カメラマンやライターとして活躍しながら、2019年に紅茶とスコーンのお店「The Tea Cozy」をオープン。移住者仲間ととびしま海道の移住相談サイト「Tobishima Life」を立ち上げ。
(Hint-Pot編集部)