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自称“乗り鉄”の韓国紙元東京支局長記者 「日常に溶け込んでいる多様な風景」 日本鉄道の魅力を語る

公開日:  /  更新日:

著者:鄭 孝俊

尹さんの関心は踏切にも 生活に鉄道が溶け込んでいる日本の風景

 尹さんが日本の鉄道に感動する理由は、これだけではありません。東京の都電荒川線のような小さな車両が、住宅街をゆっくり走る様子に惹かれるといいます。

外国人観光客の観光スポットになっている都電荒川線(JR大塚駅隣接)【写真:鄭孝俊】
外国人観光客の観光スポットになっている都電荒川線(JR大塚駅隣接)【写真:鄭孝俊】

「広島市内を走る路面電車のおもしろさを観光資源として韓国にも導入できないかと思い、2015年春に新しい都市鉄道を探している大田(テジョン)市の広報誌に広島のレポート記事を寄稿しました」

 路面電車の虜となった尹さんの関心は、踏切にも向けられています。

韓国ではほとんど見られない踏切(京王電鉄飛田給駅)【写真:鄭孝俊】
韓国ではほとんど見られない踏切(京王電鉄飛田給駅)【写真:鄭孝俊】

「韓国の大都市圏では踏切を見ることがほとんどありません。地下鉄化と高架化が進んだためです。それに比べて日本は、JRや私鉄などが毛細血管のように複雑に入り組んでいるため踏切をあちこちで見かけます。私はこの踏切に強い魅力を感じます。

 日本駐在時代、東京の西武新宿線沿いに住んでいましたが、帰宅する際は必ず踏切を渡って自宅に向かいました。実は踏切が好きすぎて、駅と自宅の途中に踏切がある家をわざわざ探して住んでいたほどです。

 西武新宿線に限らず、踏切で遮断機が下りると通りかかった人全員が立ち止まり、まるで共同体になったかのような感覚になります。『♪カン、カン、カン』と警報音が鳴るなか、全員がその日に起きたことを静かに振り返っているように見えます。日常生活に溶け込んでいる日本の踏切の風景は、韓国では経験できない至福の時間です」

 そもそも、韓国の鉄道が日本と違うのは「道路優先政策」にあると説明します。

「韓国の場合、国家の交通政策の中心は道路でした。目的地まで迅速かつ簡便に到達するためには道路が便利です。一方、日本は鉄道が中心のように思います。国鉄が分割民営化され、私鉄の路線も全国各地ごとに延びています。日本では全国各地の有名観光都市には必ず鉄道が通っていますが、韓国ではそうではありません。

 たとえば、新羅の都が置かれた慶州には日本の新幹線にあたる高速鉄道KTXが延びていて新慶州駅で停車しますが、百済の都だった扶余(プヨ)へ行くにはKTXやSRTが通っている公州駅で下車し、バスやタクシーで中心部まで約40分もかかります。そのため多くの人はソウルからバスか自動車で向かいます。日本で言うと、京都には新幹線で行けますが、奈良には行けないというのと同じ感覚でしょうか。鉄道建設のコストを考えると合理的な判断かもしれませんが、旅情という点ではまったく物足りません」