仕事・人生
「寿退社がうらやましいと思う時代だった」 銀行を辞めてドイツ系証券会社に転職 輝く起業家のこだわりとは
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シンガポールから帰国 日本で本格的にパソコン講師に
約8年の海外生活を終え、帰国。シンガポールでの講師の経験をいかしたいと思った小林さんは、駅前のパソコン教室などに講師の求人について問い合わせました。しかし、日本には資格制度があり、それがないと教えることができなかったといいます。そこでプログラミングを学んだり、ITに関するセミナーに通ったり、本格的に学びを深めていきました。
そんなとき、県が主催するパソコン講師の養成講座を知り、持ち前の勉強への熱心さを発揮。講座が終わる頃には「教える側になってほしい」と依頼が来たそうです。「そもそも教える場所を探すために講座を受け始めたので、願ったり叶ったりでした」と、初心者向けのパソコン教室で講師をすることになりました。
教室に来る人たちが何をどうしたくて来るのか。ニーズに沿って講座の内容を構成し直していくと、それが評判になり、県の施設で始めた教室は市や他県へと広がっていったそうです。
「なんのために教室に来るのか、なぜパソコンの知識が必要なのか、またその深さも人それぞれです。なので、それぞれの講座で企画から組み直して提案させていただきました。だって教室に来ても、終わったあとに使いこなせていなかったらなんの意味もないですから」
気がつくと、コロナ前で年間延べ約3000人に教えるまでになっていました。
コロナ禍で立ち返った「自分の本当の思い」とは
しかし、コロナ禍になり講座はストップ。小林さんはそのときを「考えるいい機会を得ました」と振り返ります。
「私は誰に一番、パソコンの知識を教えたいのだろうか。もともと女性に教えたかったんじゃなかったのかな? だって女性たちに輝いてほしいんだよね。そう、気づいたんです」
自分の本当の思いに立ち返ることができた小林さん。コロナ禍の2020年にITコーディネータの資格を取得し、中小企業向けのデジタル化推進の業務を行うようになりました。なかには経営に関わる相談もありましたが、「経営の話をされてもわからなかったので勉強しないといけないと思った」と、2023年に経営管理学修士(以下MBA)を取得しました。
「MBAを取得して使える武器が増えたことで、よりお客様のニーズにお応えできるようになったのではないかと思っています。今は中小企業のデジタル化推進のお手伝いをさせていただいていますが、ITってただの道具なんですよね。でも、それを知っているかどうか、使いこなせるかどうかで、本業に使える時間が大きく変わってくるんです。自分の時間や家族と過ごす時間、人生って仕事以外にも時間が必要ですが、それを阻害しているのがデジタルデバイドの問題だと考えています。そこでITを使っていかに売り上げを伸ばせるか、自由な時間を生み出せるか、そして幸せになれるか。そのためのお手伝いがしたいと思っています」
実は小林さん、MBA取得後にうれしい出来事があったと教えてくれました。それが埼玉県産業振興公社から来た、女性起業家に向けた講演依頼だったといいます。
「ようやく女性が輝くためのお手伝いができると、うれしかったんです。やっぱり女性がもっと輝けるような、ITの知識をつけられるようなお手伝いをしていきたいんですよね。ITが使えれば、どこの地域に行ってもできることは広がりますからね」
株式会社エアフォルク代表。父の海外赴任のため、中学3年生から5年間をドイツで過ごす。日本の大学を卒業後、都市銀行を経て外資系証券会社東京支店に転職したあと、夫の海外赴任のため8年間を海外で過ごす。現地のパソコン教室でITインストラクターやウェブ制作の活動を開始。帰国後、自治体や公的機関でITインストラクターとして活動し、近年では社内ITリテラシー向上や生産性向上のための企業研修にも注力している。今年7月に発売された「スマホ決済がゼロからわかる完全使い方ガイド」(メディアソフト刊)の編集にも一部携わっている。
(Hint-Pot編集部・出口 夏奈子)