仕事・人生
同級生はイタリアの元貴族 宮殿で目撃した異世界…13歳で異国に渡った女性経営者の歩み
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レストランで差別も… 「その場その場で解決をするのを心がけています」
大学院を卒業し、社会人になってからも、人種差別的な扱いを感じた経験はありました。「差別はたくさん受けました。彼らからしてみると褒めるというのは、『ヨーロッパ人みたいでよかったね』という褒め方なんです」。レストランでは空席があるにもかかわらず、隅の席に案内されたこともありました。
それでも、イタリア文化の素晴らしさを伝えたいという長谷川さんの志は揺らぎませんでした。いじめられようが、偏見を受けようが、「通り道だと思っていれば耐えられるというか、すっと通り過ぎるだけ」。意識したのは、頭の中を分けて考えることです。
「やっぱり価値として認めた理念であったり、文化の深さであったり本質的にすごく大事だなと自分の人生で思えるものを続けていくことが一番自分のメリットになる。そこのことだけ考えるという感じですかね。嫌だったらその時点で闘って解決することも大事で、なんでこの席に案内するんだ、私はこっちがいいんだと言って移動するとか、その場その場で解決をするというのを心がけています」
起業しようと考えたのも、高校生のとき。「高校時代に自分で会社を興して、何か日本とイタリアをつなげるようなことをしたいなって思いました」。大学院時代に文化交流のための会社を起業。その後、2018年3月にはエルゴン・ジャパンを設立します。「エルゴン」はイタリアの歴史あるヘアケアブランドで、海外では名が知れていました。
今では主要百貨店に展開するほど、業績を上げてきましたが、長谷川さんはまだまだ満足していません。奥深いイタリアに、最近も驚かされる出来事がありました。
イタリア人女性が美しい理由 「牛乳瓶みたいな感じで毎日届けてくれる」
再び高校時代の元貴族の友人の話です。
「先日、久しぶりにその友達と会ったんですね。そしたら全然老けてないわけですよ。すさまじく美しかった。『何をどうしたらそんなにあなたはきれいなの?』と聞いたら、その子が言うにはイタリアってお金持ちが使っているレシピがあるって言うわけですよ。門外不出というか、それこそ500年ぐらい受け継がれてきていて、蜂蜜と卵とオイルと何とかを調合して、その場で作るシャンプーみたいなのがある。今はそれを作っている会社もあって、毎日届けてくれるらしいんですよ。牛乳瓶みたいな感じで」
長谷川さんは1つを譲り受け、自身の髪に使用してみました。卵を使っているせいか、シャンプーには生臭ささがあり、なかなか泡立ちませんでしたが、髪の毛は「エーッていうくらい、つやつやになったんです」と、感動するほどの効果があったと言います。
「『これは毎日使っていたら、ああなるよね』と思いました。おそらく肌にしても、髪にしても全部そういうものを使ってらっしゃる人たちだと思うんですけど、要するに貴族の社会ではおそらく古代からもうずっと試行錯誤して、何万通りも試した後にたどり着いた秘伝のレシピがある」
いま、長谷川さんの興味はこのシャンプーの中身。イタリアに追いつき、追い越せで、研究を進めているそうです。
株式会社エルゴンジャパン代表取締役。10代半ばで渡伊し、ミラノとボローニャで約20年にわたり過ごす。ボローニャ国立大学卒業、ミラノ国立大学大学院修了。司馬遼太郎奨励賞。慶應大学文学部/外国語教育センター講師。
(Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム)