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日本の賃貸探しは至れり尽くせり 英国では内見は自力、入居前の清掃なしが一般的
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家具付きの部屋が普通?
実際の家探しをシミュレーションしてみましょう。まずは「Rightmove」や「Spareroom」などの賃貸検索サイトで良さそうだなと思った部屋に目星をつけ、その物件を出している人(エージェンシー、大家さん、フラットメイトなどさまざま)に連絡。
そして、ビューイング(内見)の日時を調整します。このときびっくりするのが、エージェンシーを通しても、とくに家まで連れていってくれるわけでもなく現地集合が普通であること。エージェンシーの人も物件ごとに担当があるようで、自分の担当物件をその日に固めてほかの人にも案内していることがあるので、自分で次の物件へとはしごします。
また、日本での物件探しとの一番の違いは、家具付きの部屋が多いこと。ベッド(マットレス含む)、デスク、椅子、ワードローブ、ライトスタンドなど基本的な必須アイテムは付いてくることが多いです。大家さんが購入してそろえているものもあれば、過去のテナントの人が置いていってそのまま部屋の一部と化しているものなどさまざま。
こっちに引っ越してきたばかりだと、すべてを買いそろえるのは金銭的にも大変ですし、毎回これらを持って移動・引っ越ししなければいけないということもないので、救われるかもしれません。ただ、衛生面などいろいろと気になる人もいると思うのでよりけりですが……。
私の知人で、なぜか最初の家でソファを買って、結局引っ越し時に置き場に困るというケースもありました。いろいろな理由で引っ越しすることがあると思うので、むやみやたらと最初に家具をそろえるのは控えたほうがいいかもしれません。
日本と違う慣習といえば、先に述べたようにこちらにはデポジット制度がありますが、礼金はありません。これはレントの1か月分や1.5か月分を先に手付金として払い、何かを壊してしまったなどの問題がなければ、退去時に満額戻ってくるシステムです。
ある物件への入居の希望・意思がある場合は、支払って初めて入居権利がサーブされることがほとんどです。日本でも礼金がないところが増えてきていると思いますが、ただでさえお金がかかる引っ越し時にデポジットだけなのはありがたいと思いました。
いくらきれいにしていても出てくるネズミ
さて、デポジットは敷金のようなものと説明しましたが、前入居者の退去時、日本のように大家さんがプロのクリーニング業者を入れて清潔にしてから次の人に引き渡すということはほぼないと思います。なので、退去する前に自分で丹念に掃除し、きれいにしてから大家さんのチェックを受けるのが一般的(インベントリーチェックといい、入居時の家具などがすべてそろっているかも確認します)。そして、もし気になるところがあれば大家さんがテナントに請求、もしくは大家さん側で対処するというサイクルです。
これは、自分が出て行くときは少し気が楽ですが、入るときは緊張もの。前の入居者のことはほぼ知らないのが常ですから、その人がどんな使い方をしていたのか、どれくらいの衛生観念がある人だったのかを推し量るのはけっこう重要です。私は極度の潔癖症ではないですが、やはり入居するときは気になるのでできるものは最初に、なるべく自分でも念入りに清掃していました。
また英国の家事情でよく耳にするのはネズミです。私も一度被害に遭いましたが、大家さんは「そんなのよくあるわよ~」くらいの調子でそこまで緊迫感がありませんでした。友人も最近家を購入したのですが、実は屋根裏にネズミが住み着いていたようで、夜は大運動会状態。案の定、眠れなくなり、会社でずっとヒステリックになっていました。
あとはシルバーフィッシュもよく聞く被害です。友人も、理想通りのフラットが見つかって喜んだのもつかの間、建物全体でシルバーフィッシュ被害が恒常化していたようで、それが入居してからわかったということも。
このように英国では、たかが家探しですが、されど家探しです。何度か引っ越しをすればわかってくることもあるのですが、最初のうちはわからないのが当たり前。情報収集しつつ、自分の目と直感を信じて、心地いい家を見つけてください。
次回は、誰もが直面するであろう仕事探しについて掘り下げたいと思います。
(Moyo)
Moyo(モヨ)
新卒採用で日本の出版社に入社するも、心身ともに疲弊し20代後半にノープランで退職。それまでの海外経験は数度の旅行程度だったが、イギリスへ語学留学ののち移住した。そのまま、あれよあれよと7年の月日が経ち、現在はフランスに在住。ライター、エディター、翻訳家、コンサルタントとして活動している。最近ようやくチーズのおいしさに少し目覚める。