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日本の就職希望者と企業は「お店とお客さん」のような関係? 英国の職探しで驚いたこととは

公開日:  /  更新日:

著者:Moyo

エージェンシーには登録すべき?

 留学や家探しでのエージェンシーと同様で、結局なんでもメリット、デメリットはあるかと思います。しかし、英国での職探しについて何も知識がない状態なら、エージェンシーを利用してプロの知見を聞くことはある程度プラスに働くでしょう。

 もちろん、慣れてくれば自分で直接仕事探しをすることも可能です。逆に会社側からヘッドハンティングで声がかかってくることもしばしばあります。

 日本語が話せる人材を求める仕事を多く取り扱う英国のエージェンシーは、3~5社あります。あとから気づいたことですが、エージェンシー間で同じ仕事を斡旋していることもあるので、すべてに登録する必要はないかもしれません。ですが、それぞれ強い分野などはあるので、時間が許す限り登録しても無駄ではないと思います。

 エージェンシーに登録するメリットとしては、求人の動向はもちろん、簡単なインタビュー(面接)を通して、これまでの職歴や自分の希望業界などを汲んでくれます。さらに、実際に応募する段階になると、応募企業の求める人物像やインタビューの傾向など、日本の転職エージェンシーのようにいろいろと教えてくれることも。

 私自身、右も左もわからないときに、日本での自分の経験をいかせる仕事としてどのようなものがあるか質問できました。また、転職エージェンシーの求人には絶対に出てこないけれど、こういう現地会社だったら日本語が武器になるかもしれないなどの耳寄り情報を教えてもらったこともあります。

 紹介される仕事は、やはり自分の第1希望と完全に一致しないことがほとんどでしたが、どんな会社や仕事があるかをまず知るうえではとても参考になりました。

LinkedInは本当に有用?

LinkedInに登録するのもひとつの手(画像はスクリーンショット)
LinkedInに登録するのもひとつの手(画像はスクリーンショット)

 そのほか、現地の人がよく使うツールとして「LinkedIn」「Glassdoor」などが挙げられます。日本でもLinkedInがだんだん認知されてきていると思いますが、簡単に説明するとビジネス版フェイスブックのようなもの。求職者側は自分のマイページを詳細な名刺代わりのように使うことができ、企業はこのプラットフォームを使って求人情報の掲載や、気になる人材に直接コンタクトできます。

 ほかの求人プラットフォームと違うポイントは、双方向型ということ。求職している個人が気になる仕事にLinkedInから直接応募できるのはもちろん、自分の学歴、キャリア、スキルなどを公開できるので(公開設定などは自分の好みで変更できます)、その人の能力が気になったエージェンシーや企業のHR(人事部)から「今こんな仕事があるんだけど、興味ありませんか?」と、逆コンタクトがあることもしばしば。

 さらに、自分の検索だけでは知り得なかった情報にリーチすることもよくあります。たとえば、知り合いの知り合いが個人的に募集している仕事など、シェアで回ってきた投稿から新たな発見があるので、うまく活用すればとても有用です。

 かくいう私も、なんとなく存在自体は知っていたものの、アカウントを作成したのは英国に来てから。現地企業のインタビューのお知らせが来たときに、相手側のLinkedInのURLが貼ってあったので(事前に先方のインタビュアーの名前と顔、キャリアも事前にわかるのはありがたいですよね)、「こっちでプロフェッショナルに見られるためには必要なのか!」と思い、インタビュー前に急いで自分のアカウントを作りました。

 気をつけていただきたいのは、最近ではフィッシング詐欺に使用されるケースや、アプリ内での詐欺も報告されているようです。個人情報の管理に気をつけるのはもちろん、怪しい話などは見分ける力が必要になってきます。ぜひうまく活用してください。

 以上のような経験から、日本の就職・転職活動は、採用される側が手書きで熱意を伝えたり、採用する側がお昼ごはんを用意したりと、「お店とお客さん」のような関係。たとえ不採用でも、自社製品を送ってくれる企業があるというニュースも耳にします。

 それに対して、求めている人材が明確で、企業と応募者がお互いに合うかどうか、すっきりさっぱりとすり合わせに重きを置くのが英国の良いところかもしれません。

 英国はジョブ型雇用といわれ、職務などを明確にしたうえで雇用しますが、日本は新卒制度に代表されるように、採用後に人材を育てるメンバーシップ型の慣習があります。どちらもそれぞれの社会に根づいているがゆえの良いところがありますが、あなたはどちらが向いていると思いますか?

(Moyo)

Moyo(モヨ)

新卒採用で日本の出版社に入社するも、心身ともに疲弊し20代後半にノープランで退職。それまでの海外経験は数度の旅行程度だったが、イギリスへ語学留学ののち移住した。そのまま、あれよあれよと7年の月日が経ち、現在はフランスに在住。ライター、エディター、翻訳家、コンサルタントとして活動している。最近ようやくチーズのおいしさに少し目覚める。