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子どもから大人まで夢中に プロダンサーが明かすNewJeansのダンスが魅力的に見える理由

公開日:  /  更新日:

著者:鄭 孝俊

「K-POP全体を見ても、これほど難しいダンスはあまり見かけません」

 話を聞く限り、NewJeansのダンスは難しすぎるため、“講師泣かせ”であるということが見えてきました。

「『趣味クラス』は1か月、計4回で仕上げなくてはいけないので工夫が必要です。通例だと、1週目にサビ前まで、2週目にサビと2番、3週目に終わりまでやってみる。それで余裕を持たせて、4週目に完成させます。でも、『ETA』は動作が細かすぎて、一人ひとりにかける時間があまり取れないという葛藤がありました。プロのダンサーならとにかくやるしかないのでどんどん先に進めますが、生徒のみなさんは初心者なのでなかなか先に行けません。バラバラな動きをサビの部分でそろえるところまではなんとか進めますが、フォーメーションでメンバーが移動するときもみんなバラバラです。移動するだけでも混乱しますし、そこに加えてメンバーの手の動きやステップが異なります。短いカウントのなかに難しい振り付けと難しい移動が大量に入ってくるので、ダンスの難解さという点ではものすごくハイレベルです」

 それにもかかわらず、NewJeansの動きは自由で優雅に見えます。

「体の各部位をすべて使っていますし、体幹がしっかりしていないと体の軸がぶれてしまいがちな動きもそつなくこなしています。ほかのK-POPグループにはないグルーヴ感があり、ヒップホップ寄りといえます。足の動きの2倍の速度で手を動かしていますし、裏拍まで振りを入れてくるこうしたリズム感には脳トレも必要です。ダンスの基礎がしっかりできていないと表現できない動きが多いので、単なる興味でNewJeansのダンスを習いたい受講生には、まず『基礎クラス』に入るようにすすめています」

 NewJeansの代表曲でもあり、SNSのダンスチャレンジ動画でもおなじみの『Hype Boy』は、横に展開していく振り付けがとてもユニークです。

「あの場面も、よく見るとメンバー全員の振りが実はバラバラなんです。単調になるのを避けて、あえて動きを複雑に見せているのでしょう。しかも、くるくるとセンターが入れ替わり、一番左にいたメンバーが複雑に移動しながらきれいにまたセンターに戻ってくるなど細かい動きをしています」

 AIRIさんは、「K-POP全体を見ても、これほど難しいダンスはあまり見かけません」といいます。ところがNewJeansには、これに輪をかけて難しい楽曲があります。それはジャズベースの「Cool With You」という曲です。

「手のなめらかでしなやかなひらひらとした動きが、映える衣装も印象に残ります。ジャズダンスの要素が含まれた少し絡むような動きが全員違っているうえに、フォーメーションの移動も複雑。このような難解なダンスを披露するためには、まずメンバーを集める段階からレベルの高い人材を集める必要があります。そこからグループのコンセプトに合わせていき、さらに厳しいレッスンを繰り返さないと実現できません。NewJeansはこれまでのK-POPのスタイルにはないグループなだけに、今後の活躍が楽しみですね」

◇AIRI(あいり)
幼少期からバトントワリングを始め、13歳からダンスを始める。JAZZ HIPHOPやGIRLS HIPHOPを中心に東京ダンス&アクターズ専門学校でさまざまなジャンルを学び、卒業後もメディアなどでダンサーとして活動中。これまでに乃木坂46の「乃木坂46 真夏の全国ツアー2017 FINAL! IN TOKYO DOME」、サザンオールスターズの「ほぼほぼ年越しライブ2020Keep Smilin’~皆さん、お疲れ様でした!! 嵐を呼ぶマンピー」、桑田佳祐の「LIVE TOUR 2021 BIG MOUTH, NO GUTS!!」などにダンサーとして出演。ほかにもケツメイシの「飲みニケーション」、EXILEの「Rising Sun」「EXILE PRIDE~こんな世界を愛するため~」、E-girlsの「ごめんなさいのKissing you」などのミュージックビデオにも出演した。

(鄭 孝俊)

鄭 孝俊(てい・こうしゅん)

元全国紙記者。在職中に東京大学大学院に入学し、仕事の傍ら研究生活に入る。文化人類学やメディア論に関心を持ち、韓国エンターテインメントとファン行動について論文を執筆。専攻は日韓メディア比較論。日本や韓国だけではなく、東南アジアの伝統芸能や食生活にも関心を寄せている。