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英国でオフィスワークがしたい 希望の職にたどり着くには回り道も 海外在住日本人女性の金言
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英国で日系企業にカルチャーショックを受ける
3か月も経つと、仕事の流れがだいたいつかめてミスも減り、楽しめるようになっていました。しかし、2年もあるYMSビザをどう使うか考えたとき、やはりせっかくなら自分の経験が少しでもいかせるオフィスワークも経験してみたいと思ったのです。
ただ、私の希望する職種は少し特殊だったので、書類選考で落とされ続け、日本でいう“お祈りメール”をたくさん受信しました。
そんなとき、登録していたエージェンシーから「日系企業のポジションが空いているから応募してみませんか」とお誘いを受けました。日系企業だと日本の環境と変わらずあまり意味がないのでは? と考える部分もありましたが、自分の職務経歴がそのまま直結するわけではなく、オフィスワークに移るいいきっかけになるとポジティブに考えて応募。そして、運良く採用していただくことになりました。
なかには、せっかく英国にいるんだから日系企業で働くのはもったいないと、最初の頃の私のように思う人もいるかもしれません。実際に私も、オフィスのほぼ90%が日本人、直属マネージャーも日本人という環境に最初は戸惑いました。
しかし、取引先との連絡は英語が基本になりますし、英語の資料作成など新たな挑戦もあり、それらを吸収できる場として決して無駄にはならないと思いました。日系ならではの細かさなどが問われる職場でもあったので、前職の出版社のゆるさとは大違い。ここまでやるのか……! と、日本のカルチャーショックを英国で受けることもありました。
内部の経理に提出する精算書類で、大義には関係ない部分でも、ちょっとしたミスがあったら一から打ち直して完璧な書類を提出し直す(前職の出版社だったらハンコと線引きで済んだはず)、始業時間の何分前に出勤(始業時間の意味は?)などなど、暗黙のルールも含めて「こういう文化も海を渡るんだな」と思うことも。
接客業もそうですが、日本にいたら経験することのなかったであろう仕事に違う国で挑戦できるのも、ひとつの魅力だと思います。
転機を逃さないためには
さて、また少し経つと仕事にだいぶ慣れてきて、自分の進路について考え始めます。YMSビザはとにかく何をしてもいいビザです。勉学に励むのも良し、旅行をするも良し、仕事に精を出すも良し、趣味に没頭するも良し。
ただ、私は先にも書いたように自分の経験をいかせる仕事をしてみたい+語学留学でかかった費用(約250万円!)くらいはしっかり稼いで帰りたいという密かな野望もありました。
そこからは常にアンテナを張っている状態でした。日本でもそうだと思いますが、気になる仕事がいつ出てくるかは本当にタイミングと縁しだいで、まったく予想できません。常に転職サイトを見続けていると、ずっと掲載されている仕事や会社がだんだんわかってくるので、会社が怪しいのか、よっぽど仕事環境が悪くて人がすぐに辞めてしまうのかなども見えてくるようになりました。
そんなとき、たまたま自分の経験をいかせるかもしれない仕事が見つかりましたが、案の定、YMSビザからの応募はお断りとの注意書き。ですが、自分の存在を知らせなくては! という思いで、YMSビザお断りと書かれているのを承知のうえであえて応募させてほしいという渾身の思いを書き、応募。
1日もしないうちに、「申し訳ないけどYMSビザの人は一切無理です。ごめんなさい」と“お祈り”メールが来てしまいました。
せめて話だけでも聞いてくれないのかと落胆しましたが、時間は止められません。ビザの期限はどんどん短くなる一方。立ち止まる暇もなく、また仕事探しを始めましたが梨のつぶてが続きます。
すると1か月も経った頃、知らない電話番号から着信が。留守番電話を聞いてみると、「この前応募した仕事で条件に合う人がなかなか見つからず、私のCVを改めて見たところ話を聞きたい」という内容でした。そこからは急展開で、テストを受けてインタビューに呼ばれたのです。
これが私の英国での新たな幕開け、また、その後の自分のキャリアの転機にもなりました。
このように、私のような崖っぷちでもこんなミラクルが起こる! ということが、みなさんにも伝わればいいなと思います。もちろん準備など自分で努力しないといけない部分はありますが、タイミングと縁をつかめるように動き続けていれば、何か起こる可能性もあるのが英国です。ぜひ挑戦してみてください。
次回は、英国で実際に働いてみてわかった“びっくり体験”をご紹介したいと思います。
(Moyo)
Moyo(モヨ)
新卒採用で日本の出版社に入社するも、心身ともに疲弊し20代後半にノープランで退職。それまでの海外経験は数度の旅行程度だったが、イギリスへ語学留学ののち移住した。そのまま、あれよあれよと7年の月日が経ち、現在はフランスに在住。ライター、エディター、翻訳家、コンサルタントとして活動している。最近ようやくチーズのおいしさに少し目覚める。