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プロテインの特徴を知って効果的に摂取 「ホエイ」「カゼイン」「ソイ」…違いは吸収のスピード
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教えてくれた人:虎石 真弥
ひと昔前は、ボディビルダーやアスリートがトレーニング後に飲むイメージが強かったプロテイン。近年では種類や加工食品も増え、より身近になりました。スーパーマーケットやコンビニエンスストアでも手軽に買えるようになりましたが、種類が多く、どういった違いがあるのかわからないことも多いのではないでしょうか。そこで、埼玉西武ライオンズでプロ野球選手の栄養指導を行っている帝京大学スポーツ医科学センターの虎石真弥さんに、プロテインとはどのようなものなのか、その特徴と飲み方について伺いました。
◇ ◇ ◇
プロテインとは体への吸収を良くしたたんぱく質
――そもそも、プロテインとはなんなのでしょうか。
「たんぱく質です。ただ、炭水化物を口の中で噛んでアミラーゼという酵素によって分解されるのとは異なり、たんぱく質はより複雑なプロセスをたどって消化吸収される栄養素なので、体に吸収されるまでには非常に時間がかかります。プロテインは、その複雑なプロセスをショートカットして、手軽にたんぱく質を吸収できるようにしたものです」
――プロテインの成分表示を見ていると、ホエイやカゼイン、ソイという単語を見かけますが、プロテインの種類は3種類あるということなのでしょうか。
「プロテインには牛乳を原料とするミルクプロテインと、大豆を原料とするソイプロテインの2種類あるのですが、ミルクプロテインのなかにホエイとカゼインがあります。この違いは、牛乳にお酢を入れると分離しますが、固まったものがカゼインで、上ずみの白い液体がホエイです。その割合はだいたいカゼインが8割で、ホエイが2割だといわれています」
――それら3つのプロテインの違いはなんなのでしょうか。
「体への吸収速度が異なります。それが、どのプロテインをどのタイミングで摂取したら効果的なのかということにつながってくると思います」
ホエイ、カゼイン、ソイの違いは? それぞれ異なる摂取のベストなタイミング
――プロテインは種類によって体への吸収速度が異なるということですが、どのプロテインが一番、吸収のスピードが速いのでしょうか。
「ホエイプロテインですね。多くの野球やサッカーなど、スポーツの現場で人気のプロテインで、試合後に選手たちが飲んでいるのが、このホエイプロテインです。スポーツをすると筋肉に負荷がかかりますが、酷使して傷んでしまった筋肉を目がけて血中のアミノ酸濃度を高めることで回復を助けてくれます。ですからアスリートでなくても、女性や高齢者の方でもウォーキングをしたり、ジムで汗を流したり、ちょっと体を動かしたあと、できるだけ早くホエイプロテインを摂取するといいですね」
――ホエイプロテインは運動後に摂取すると効果的ということですが、同じ牛乳を原料にしているカゼインプロテインは、どのタイミングで摂取するのがいいのでしょうか。
「カゼインプロテインは、吸収のスピード自体はとてもゆっくりで、その分持続するのが特徴です。要は、腹持ちするイメージですね。たとえば、今日はとくに体を酷使したなという日や、寝る前などにカゼインプロテインを摂取するといいと思います。
というのも、夕食を食べてから翌日の朝食まで、けっこう時間が空きますよね? この食事の間隔が空いてしまって空腹になることから、筋肉をどんどん分解してエネルギーに変えてしまうのです。ですから、なるべく空腹の状態を作らずに、常に血液中にアミノ酸がある状態にしておくことで筋肉の分解を回避できるので、夜寝る前にカゼインプロテインを摂取するといいですね」
――では、ソイプロテインはホエイ、カゼインに比べて、どういう特徴があるのでしょうか。
「ホエイやカゼインは動物性ですが、ソイプロテインは植物性です。そのため、たんぱく質の補給にプラスして大豆イソフラボンを摂取できるメリットがあります。とくに女性の方に関しては、40代から50代にかけて更年期に差しかかると女性ホルモン(エストロゲン)が減ってくるので、さまざまな症状が出がちです。そのため、女性ホルモンに似た分子構造を持つ大豆イソフラボンを食事のときに摂取するようにしている方も多いかもしれません。
最近では、抹茶味やストロベリー味といった、いろいろな味がついた大豆イソフラボンを含むプロテインバーやヨーグルトなどもありますので、そういったものをおやつとして上手に取り入れるなどすることで、自分の体と向き合ういいきっかけになるかなと思います。ちなみに、ソイプロテインもカゼインと同様、吸収のスピードが非常にゆっくりです。運動後に摂取するよりは、カゼイン同様に体を酷使した日や寝る前に摂取するといいでしょう」
(Hint-Pot編集部・出口 夏奈子)
虎石 真弥(とらいし・まみ)
栄養学(修士)、管理栄養士。帝京大学スポーツ医科学センター講師を務める傍ら、スポーツ現場におけるアスリートへの栄養サポートのほか、保護者向けの講演などを行っている。また、現在はプロ野球・埼玉西武ライオンズの選手への栄養指導も行うなど、幅広く活躍している。