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プロテイン摂取量の目安や注意点 プロ野球選手を指導する管理栄養士が指摘

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・出口 夏奈子

教えてくれた人:虎石 真弥

実際に球団の寮で提供されているプロテインバー【写真提供:埼玉西武ライオンズ】
実際に球団の寮で提供されているプロテインバー【写真提供:埼玉西武ライオンズ】

 スーパーマーケットやコンビニエンスストアでも手軽に買えるようになったプロテイン。一見、どれも同じように見えますが、牛乳を原料とするホエイプロテインとカゼインプロテイン、大豆を原料とするソイプロテインと種類が異なります。どのプロテインをいつ摂取するとより効果的なのか、わからないことも多いのではないでしょうか。そこで、埼玉西武ライオンズでプロ野球選手の栄養指導を行っている帝京大学スポーツ医科学センターの虎石真弥さんに、効果的にプロテインを摂取する方法と注意点について伺いました。

 ◇ ◇ ◇

体重1キロに対して1.6グラムのたんぱく質摂取を推奨

――ホエイ、カゼイン、ソイ、それぞれのプロテインについて、期待できる効果や摂取のタイミングが異なるということですが、たとえば1日のなかで、用途に合わせて3種類のプロテインを摂取することに問題はないのでしょうか。

「その方のライフスタイルによって考えるといいでしょう。朝、昼、晩とどんな食事を食べているのか? たんぱく質の摂取不足がないか? など、1日に必要なたんぱく質の摂取目安量があります。足りていない分を何でどうやって補填するのかという点で、プロテインを活用するのもひとつの方法です。仮に、普段の食事で十分にたんぱく質をとれている人があえてプロテインを摂取すると、肥満につながる可能性があるので注意が必要です」

――では、一般的に1日に摂取するたんぱく質の量は、どのくらいを目安にするといいのでしょうか。

「たんぱく質の必要量は、身体活動レベルや体の大きさによって異なりますが、厚生労働省が公表している『日本人の食事摂取基準(2020年版)』では、たんぱく質の目標量として、身体活動レベルII(普通の活動量)の女性の場合、30~49歳で67~103グラム、50~64歳で68~98グラムとされています。なかには、この量を食事から確保するのが難しいケースもあるかもしれません」

――補食としてであれば、牛乳やゆで卵でもたんぱく質は摂取できます。あえてプロテインで摂取するメリットはあるのでしょうか。

「プロテインのメリットとしては、たんぱく質がとれるうえに、脂質が極めて少ないことです。牛乳や卵でも、もちろんたんぱく質は摂取できますが、どうしてもある程度の脂質が含まれてしまいます。激しいトレーニングをするアスリートでは、筋肉づくりと併せて無駄な体脂肪を増やしたくないと考え、プロテインを活用してたんぱく質を補う方が多いですね。

 ただ、これは余計な体脂肪を増やしたくないアスリートの場合です。もともと1日のエネルギー摂取量を十分にとれていない高齢者の方や成長期のお子さんに関しては、逆にエネルギーとなる脂質も重要な栄養素。それぞれに必要な栄養のバランスを考えて、上手にとってほしいと思います」

高齢者や消化吸収能力が落ちているときにも効果的 プロテイン摂取の注意点とは

――一方で、最近は飲みやすさを重視した甘いプロテインやプロテインバーなど、プロテインの加工食品も種類が豊富です。栄養面で気をつけないといけないことはあるのでしょうか。

「プロテインはあくまでも食事の補填であって、メインの食事ではないため、たんぱく質がとれなかったときの補給という意識を忘れずにいてほしいです。プロテインバーなどの加工食品にはチョコレート味など、脂質だけでなく糖分が意外に多いものもあるので、成分表示をきちんと確認するなど、少し注意したほうがいいと思います。

 一方で、忙しくて食事を食べ損ねたときなど、たんぱく質のほかにエネルギーや脂質も適度に含むプロテインバーを活用するのはおすすめです。むしろ欠食したり、カップラーメンなどのジャンクフードで簡単に済ませたりするよりは、栄養バランスが取れると思います。ただし、おやつ代わりに甘いプロテインバーを食べるのは、カロリーオーバーになるので要注意です」

――近年では、高齢者のなかにもプロテインを摂取している方がいると聞きます。高齢者の方のプロテイン摂取について、注意することはあるのでしょうか。

「65歳以上の高齢者に多くみられる、筋肉が減少した状態であるサルコペニアの予防として、適度な運動と十分なたんぱく質摂取が推奨されています。(目安は、体重1キロあたり1.2~1.5グラム)しかし、そもそも高齢者の方は、内臓機能の低下によって、食事からとったたんぱく質食品を消化吸収して活用する能力が落ちてしまいます。そんなときは、内臓に負担をかけず、確実に筋肉の原料になるプロテインを活用するのがおすすめです。その後の筋肉づくりの後押しをしてくれるでしょう。

 これは、若年の方で、体調が優れない、疲労で内臓が疲れているときなども同じです。つまりは自分の体の状態に合わせて上手に活用するのが大事といえます」

――最後に、プロテイン摂取における注意点を教えてください。

「我が国では、多くの世代でたんぱく質摂取が問題視されています。一方で、アスリートやスポーツ愛好者らの一部には、プロテインの過剰摂取の方もいます。体づくりにおいて必要なたんぱく質も、過剰摂取の状態が長く続くと腎臓へ負担をかけたり、体脂肪を増やす原因になったりします。いいものだからとるのではなく、まずは自分の食生活を振り返って見直すところからスタートしたいですね」

(Hint-Pot編集部・出口 夏奈子)

虎石 真弥(とらいし・まみ)

栄養学(修士)、管理栄養士。帝京大学スポーツ医科学センター講師を務める傍ら、スポーツ現場におけるアスリートへの栄養サポートのほか、保護者向けの講演などを行っている。また、現在はプロ野球・埼玉西武ライオンズの選手への栄養指導も行うなど、幅広く活躍している。