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「記憶喪失と記憶障害は別のもの」 ドラマ「アンメット」原作者の元脳外科医が語る脳と記憶の関係

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・鍬田 美穂

記憶がなくても、その人らしく生きられる

記憶障害を抱えながら脳外科医として生きるミヤビ【写真提供:カンテレ】
記憶障害を抱えながら脳外科医として生きるミヤビ【写真提供:カンテレ】

 記憶障害の後遺症を抱えるミヤビは、「私はまだ、医者なのだろうか」という葛藤を抱えていました。記憶を失い日常の連続性が断たれることは、人間関係など社会生活を送るうえで困難があるだけでなく、“自分らしさ”をも揺るがすかもしれません。

「そこは、この作品が問いかけていることのひとつですね。記憶がなければ、その人らしさは失われると考えるかもしれませんが、僕は『本当にそうなのか? 記憶がなくたって、その人らしくいられるんじゃないの』と思っています。

 三瓶がミヤビに『強い感情は残ります』と言いますが、海馬の損傷でエピソード記憶を失っても、脳内のほかの場所で感情や潜在意識はちゃんと働いています。心の話をすると、喜怒哀楽だけが感情ではなく、心はもっと広い概念です。お腹がすいたらイライラするし、嫌なことがあっても、やけ食いをしたら幸せになるとか(笑)。記憶がなくても、幸せな心はあるし、瞬間瞬間で立派な人格でいることができます。

 言い方を変えると、記憶は“単なる記憶でしかない”ということ。脳に障害を負って、記憶を失ったり、何かができなくなったりすることがあるかもしれません。でも歩けなくなった人が、車椅子を使うのが当たり前のように、本人の努力だけじゃなく、周りの理解やサポートがあれば、その人らしく生きることはできるはず。記憶は確かに大事だけれど、人間はもっと奥深い。人の人間性や“らしさ”に、記憶があるか、ないかは関係ないと思いますね」

◇ドラマ「アンメット ある脳外科医の日記」番組概要
原作:子鹿ゆずる(原作)・大槻閑人(漫画)「アンメット-ある脳外科医の日記-」(講談社「モーニング」連載)
出演:杉咲花、若葉竜也、岡山天音、生田絵梨花、山谷花純、尾崎匠海(INI)、中村里帆、安井順平、野呂佳代、千葉雄大、小市慢太郎、酒向芳、吉瀬美智子、井浦新
放送日時:カンテレ・フジテレビ系列 毎週月曜日22:00~22:54
配信:カンテレドーガ、TVerにて最新話を無料配信。FOD、ネットフリックスにて最新話まで全話配信
制作著作:カンテレ
制作協力:MMJ

(Hint-Pot編集部・鍬田 美穂)