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「家族が一緒にスーパーへ行ってくれない(笑)」 成城石井トップバイヤー ヒット商品選びの秘訣とは

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・鍬田 美穂

ブームの兆しをいち早く察知 200店舗で世界一の販売数で表彰も

 苦労して商談にこぎつけたなかにはヒット商品も。濱田さんが「口説き落とすのに、2年かかりました」と言う「フェラリーニ パルミジャーノ レジャーノ」は、ジャージー牛の乳から作る珍しいチーズ。こちらのチーズをホール状で輸入したものを、国内でパウダー加工して原料として使用した同社のオリジナル商品も人気です。

 また、5年前に販売を開始した「ハンターズ 黒トリュフフレーバーポテトチップス」。トリュフブームの可能性を感じたバイヤーが交渉すると、当初はメーカーから規模の面で難色を示されます。

 しかし、トリュフフレーバー人気の先駆け商品として、2年目には世界一の販売数になる大ヒット。一部、卸売も含むとのことですが、店舗数が多くない成城石井が世界一の販売記録を出すのは驚異的で、メーカーから表彰もされました。

ブームをいち早く察知し大ヒット商品になった「ハンターズ 黒トリュフフレーバーポテトチップス」【写真提供:成城石井】
ブームをいち早く察知し大ヒット商品になった「ハンターズ 黒トリュフフレーバーポテトチップス」【写真提供:成城石井】

 目利きが活かされるのは、海外製品だけではありません。国内の商品でもクラフトコーラを早い段階で販売するなど、日頃のリサーチ力を発揮。ブームになる前から、店頭に商品が並びました。

 濱田さんによると、クラフトコーラはメーカーからの提案だったといいます。同社では選ぶ楽しさを提供するため、1ジャンルに多くの商品を扱うのも特徴のひとつ。「珍しい商品が多いことで、メーカーさんも“当たってみようか”という気持ちになりやすいみたいです」と明かしました。

早朝から長蛇の列が 驚きの商談受付スタイル

 15年ほど前に同社を訪れた際、始業直後にもかかわらず商談スペースには長蛇の列が。担当者に聞くと「商品ごとに日が決まっていて、アポなしでメーカーさんの提案を受けているんです」と言われ、驚きました。

 通常は卸売事業者が、まとめて小売店へ提案を行うのが一般的だといいます。メーカーが直接、提案を行う際も事前にアポイントを取ることが多いです。しかし、規模が小さいなどの事情でルート確保できず、商談前の段階で諦めざるを得ないケースも。

 そうしたハードルをなくし、より多くの商品を検討するため同社が採用している手法が、このフリー商談。「遠方の方にはウェブエントリー、既存取引先はアポイント制なども織り交ぜつつ、現在もフリー商談は続けています」と、今も時間内に受付をした全メーカーと商談するスタイルは、変わらないそうです。

 国内外で展開する幅広い商談から、選りすぐられる商品。同社の商品選びの基準を聞くと、濱田さんは「『味、品質、価格』の3つのバランス。そこに機能性やオーガニック、フェアトレードなどの付加価値も加味して検討しますが、3つの基本要素がそろっているのが前提です」と答えます。

厳選を重ねた末に店頭に並んでいるヒット商品の数々【写真提供:成城石井】
厳選を重ねた末に店頭に並んでいるヒット商品の数々【写真提供:成城石井】

 しかし、多くのファンを獲得する、“成城石井らしさ”を感じさせる商品の数々。基本要素だけでは説明できない部分を問うと、濱田さんは少し考え、再び口を開きました。

「まず店舗の売り場を経験して、お客様がどういう商品を求めるのか。どんな商品が並ぶと、楽しんで買い物していただけるのか。その共通認識は、しっかりあると思います。オリジナル商品の開発も、同じような軸があって“成城石井らしさ”に、つながっているのかもしれません」

 その言葉に、買い物客から商品の口コミを聞き、うれしそうだった店員さんの笑顔が思い出されます。多様性の時代といわれる令和の今、個性的な商品ラインナップでヒットを生む同社。多くの商品と接する努力やリサーチ力、確かな目利きの根幹には、小売業の基本ともいえる“店を訪れる人に楽しんで買い物をしてほしい”という、もてなしの心が満ちているようです。

(Hint-Pot編集部・鍬田 美穂)