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エアコンも網戸もないイギリスの住宅で過ごす夏 日本が恋しくなった瞬間とは

公開日:  /  更新日:

著者:Moyo

暑さ対策がなされていないイギリスの家事情

真っ青な青空は珍しいイギリス【写真:Moyo】
真っ青な青空は珍しいイギリス【写真:Moyo】

 しかし、そんなイギリスでも、2023年には世界的な地球温暖化の影響で最高気温40度を越える日がありました。また数年前には、ものすごい暑さのヒートウェーブが数週間ごとにやってきたこともあります。とくにすさまじい暑さの記憶が残っているのは、2020年のコロナ禍で迎えた夏です。

 BBCニュースから拝借すると、2020年はイギリスの観測史上3番目に暑い年で、雨量は史上5番目に、日射量は史上8番目に多かったとのこと。この異常な暑さは身をもって覚えています。イギリスの家は暑さ対策が考えられていない家も多く、コロナ禍だったので、空調が効いた友人宅や公共施設などへ気軽に避難することもできません。エアコンのない自宅で過ごすことがもう大事件でした。

 前述したように、イギリスの夏はさっと過ぎていきます。そのため、クーラーも扇風機も網戸も備えられていないことが一般的です。さらに困るのは、その短い夏や冬を見越して、そもそも家自体が太陽光を内部に封じ込め、熱損失を最小限に抑えられるよう設計されていること。

 しかも、当時私が住んでいたのは典型的なジョージアンスタイルのテラスハウス(日本の集合長屋住宅にあたります)。4階建ての家の最上階で、最も日当たりがいい部屋。天気がいい日は太陽光がきれいに入って、温かくてラッキーだなと喜んでいましたが、この夏ばかりは、なぜ私はこの部屋を選んだのだと自分を恨みました。

 日中はカーテンを引いたり、部屋の扉を開けっぱなしにしたり、シャワーをこまめに浴びたり、下の階のキッチンなどで仕事をしたりして、なんとかやり過ごすことができました。しかし、最大の難関は夜。夜は幾分気温が下がるとはいえ、風もなく、住宅の作りから部屋に熱がこもりやすいため、ベッドに入ったはいいものの汗が止まりません。

 窓を開けっぱなしにして、冷凍庫で冷やしたタオルを首に、そしてたまたま日本の友人からもらった冷蔵の冷却シートをおでこにはり、自分の体や部屋の温度を下げようと考えられるだけのことをしました。しかし、その甲斐なく、汗を大量にかくばかりでずっと覚醒。その結果、まったく疲れも睡眠も取れず散々でした。その殺人的な暑さの日々は、今でも忘れられません。

ロンドン市が公開している「Cool spaces」のマップ(画像はスクリーンショット)
ロンドン市が公開している「Cool spaces」のマップ(画像はスクリーンショット)

自分でもできる対策は?

 このような異常気象からロンドン市は、日差しを避けたり、涼んだり、休息したりできる屋内スペースをマッピングした「Cool spaces」を数年前から公開しています。日陰のある場所や給水ポイント、トイレなども掲載されているので、自宅から避難するだけでなく、外出時に困ったときもさっと大事な場所がわかるのがポイントです。

 また、これを機に人生で初めて扇風機を買った友人たちもいましたが、そもそも種類が限られていて困っていたのも覚えています。

 日本の尋常ではない暑さも大変ですが、日本のようにもともと自宅に暑さ対策がなされている、また必要なアイテムへのアクセスのしやすさはやはり心強いなと思います。こまめに水分補給をして、無理せず過ごしてください!

(Moyo)

Moyo(モヨ)

新卒採用で日本の出版社に入社するも、心身ともに疲弊し20代後半にノープランで退職。それまでの海外経験は数度の旅行程度だったが、イギリスへ語学留学ののち移住した。そのまま、あれよあれよと7年の月日が経ち、現在はフランスに在住。ライター、エディター、翻訳家、コンサルタントとして活動している。最近ようやくチーズのおいしさに少し目覚める。