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難病の女性が「人生の手綱」を取り戻せた理由 多くの人の命救う献血 正しい知識を専門家に聞いた

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

実はよく知らない人も多い、献血の正しい知識(写真はイメージ)【写真:PIXTA】
実はよく知らない人も多い、献血の正しい知識(写真はイメージ)【写真:PIXTA】

 献血は医療現場での治療に欠かせない、輸血などのために必要なものであり、命を救うための重要な役割を果たしていることは誰もが知るところです。その一方で、具体的にどのように活用されているのかを説明できる人は少ないのではないでしょうか? 輸血用血液製剤として使われるほかにも、献血された血液から造られる医薬品「血漿分画製剤」が、多くの患者さんにとって欠かせない治療手段になっているそうです。しかし、近年の献血事情には課題もあります。献血を活用した難病治療に携わる専門医と、患者さんにお話を伺いました。

 ◇ ◇ ◇

献血はどう使われている?

 献血された血液は、輸血用血液製剤と血漿分画製剤の大きく2つに分けられます。輸血用血液製剤の多くは、がん(悪性新生物)の患者さんの治療に使用されており、赤血球製剤、血小板製剤、血漿製剤などがあります。

 一方、血漿分画製剤は、血液の液体成分である血漿から特定のたんぱく質を分離し、それを医薬品として加工したものです。この血漿分画製剤には、免疫グロブリン製剤、アルブミン製剤、血液凝固因子製剤などがあり、これらは感染症や免疫疾患、血友病などの治療に使用されています。

 近年、需要が急増しているのが免疫グロブリン製剤です。主に、末梢神経に炎症が起きることで手足のしびれや筋力低下が起こり、日常生活に支障をきたす難病である慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP)や、血管炎と呼ばれる血管の炎症を引き起こし、とくに心臓の冠動脈に影響を及ぼす川崎病など、幅広い疾患の治療に用いられます。

医師の三澤園子先生
医師の三澤園子先生

 千葉大学医学部附属病院脳神経内科学准教授で医師の三澤園子先生は、「免疫グロブリン製剤は、命を守るために重要な治療選択肢であり、とくにCIDPの患者さんにとっては生活の質を維持するために欠かせないものです」と話します。

近年の献血における課題

 日本赤十字社では、医療需要に応じて必要な量の献血血液を供給していますが、献血は無償で行われるボランティア行為で、将来にわたって献血血液の供給を維持していくことは容易ではありません。

 近年、とくに30代以下の若年層の献血者数が減少傾向にあるといいます。少子高齢化による若年層の人口減少や、学校献血が減少したことがその主な要因だといわれています。一方で、医療現場での血液需要は増加しており、とくに血漿分画製剤の需要増加に対応するためには、安定的な原料血漿の確保が求められています。

 献血された血液の約55%は、血漿分画製剤の原料として利用されますが、これらの製剤の製造には7か月から12か月の時間を要します。そのため、医療の需要を見越して計画的に原料を確保する必要があります。血液の安定的な供給を継続するために、献血促進のさらなる取り組みが求められています。