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実はコスパ買いは有効じゃない? 意外に知らない食用油 用途や目的別の選び方のコツとは
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日々の料理に欠かせない食用油。さまざまな種類があるだけに、使い分けに迷う人が少なくありません。多くの食品が値上がりするなかでは、その基準が価格一択というケースも……。いったい、どういった点に着目すれば用途や目的に合ったものを選べるのでしょうか。日清オイリオ研究員の荒井千恵さんに、詳しいお話を伺いました。
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社会情勢や環境の影響を受けやすい食用油
近年の食料品を中心とした物価上昇で、食用油はかなり価格が上がっているもののひとつです。食用油は、世界的な人口増加や気候変動、地政学的なリスクなど、さまざまな世界情勢の影響を受けやすい状況があると荒井さんは話します。
「食用植物油の価格に影響する主な要素は、原料高騰が挙げられます。原料が高騰する原因を3階建ての建物にたとえると、1階部分は世界的な人口増加に伴う油脂需要の増加。
2階部分は各国のCO2排出量削減に向けた、バイオ燃料としての油脂需要の増加。3階部分が、熱波などの異常気象による油脂原料穀物の収穫減少や歴史的な円安、不安定な世界情勢による穀物相場への影響などです」
さらに荒井さんは、「大豆や菜種などの原料について、3階部分は2022~2023年度に大きな影響を受けたものの、状況はいったん緩和しました。しかし、直近では円安や国内の『物流の2024年問題』を背景とした、コスト上昇の影響が大きくなっています。そして、1階、2階部分については構造的な問題で、高止まりの状況が続くことが予想されます」と語ります。
ほかの食品では摂取しにくい栄養成分も 価格以外に着目すべき要素とは
食用油は調理に必要な素材ですが、食材として健康に必要な栄養成分も持っています。昨今はアマニ油やMCTオイルといった、健康への気遣いから選ばれる食用油も増え、そうした影響を加味し「高くても健康にプラスであれば、コスパがいい」といった考え方も。食用油を選ぶ際、どんな点に着目すべきなのでしょうか。
荒井さんは「油脂は、その構造に3つの脂肪酸を含みます。油脂の機能は脂肪酸によって異なりますが、植物油中の脂肪酸では、中鎖脂肪酸や、オメガ3系脂肪酸の一種であるα-リノレン酸などが、健康の維持増進に寄与する可能性があるとして、注目されることが多い脂肪酸です」と話し、それぞれの特徴を説明してくれました。
○中鎖脂肪酸
BMIが高めの方の体脂肪やウエスト周囲径を減少させることや、日常活動時の脂肪の燃焼を高めることが報告されています。低栄養状態などエネルギーが不足しがちな方に摂取していただくと、素早くエネルギーになるため身体機能の維持に役立つといわれています。最近では、スポーツの分野でも持久力維持に役立つという研究報告もあります。
○α-リノレン酸
DHAやEPAと並んでオメガ3系脂肪酸のひとつで、人間の体内で作ることができず、食事からとらなくてはならない必須脂肪酸です。血圧が高めの方の血圧を下げることなどがあるといわれており、生の魚が苦手な方や新鮮な魚がなかなか食べられない方は、植物油に含まれるオメガ3系脂肪酸をとることが、とくにおすすめです。
「中鎖脂肪酸はMCTオイル、α-リノレン酸はアマニ油に多く含まれています。どちらも毎日コツコツと摂取することが大切。新鮮な油を、普段摂取されている飲み物やサラダ、食事にかけて習慣化していただくことをおすすめしています」
荒井さんによると、そのほかにも脂肪酸やビタミン、植物油由来成分の健康との関係は、今も多くの研究がなされているそうで「今後も植物油の機能に注目してもらえれば」と語ります。