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「思いつきで献立を決めることはあまりできません」 フランスのリアルな食卓事情 日本人女性が驚いたこととは

公開日:  /  更新日:

著者:Moyo

シンプルでOKな夜ごはんだけれど…

ソーセージにはこのサラダがデフォルト【写真:Moyo】
ソーセージにはこのサラダがデフォルト【写真:Moyo】

 では、気になる夜ごはんはというと、こちらはイギリス同様シンプルなメイン料理で済ませることが多いと思います。ただ、どのメニューにも「これにはこの組み合わせ」というデフォルトの献立が多い様子。

 たとえば、キッシュロレーヌにはフレッシュグリーンサラダ、テリーヌにはヴィネグレットサラダ、ポークにはアリコヴェールのソテー、ソーセージにはキャロットラペなどです。ちょっとしたことですが、そのセットが成立しないと一大事に。そして、そこにバゲットを付け合わせて自由に食べます。

 私は、冷蔵庫にあるものでバランスをみながら献立を作ればいいじゃないかという考えを持っていたので、最初はこの習慣や組み合わせを覚えるのが大変でした。買い出しのときからすべてを考慮して食材を購入しなければいけません。面倒だなと思っていましたが、慣れてくると、逆にいつも「同じ」セットでいいというメリットがあることに、あとから気づきました。

意外に素朴な料理も多いフランスの食卓

 前述したような献立がある一方で、「へぇ」と思うほど至極質素な献立もあります。

 まずは、アルザス地方特有のチーズ「マンステール」を楽しむジャガイモ料理。用意するのは蒸したジャガイモとマンステールのみで、このあと何か出てくるのかと思いきや、これで終了。物足りないのではと思うかもしれませんが、匂いや味わいが強いマンステールをシンプルに楽しめて、ジャガイモを数個食べただけで満腹です。

 また、アルザス版「シャルキュトリ」も有名です。さまざまなソーセージ(プレーンなものからチーズ入りなど)やテリーヌをお肉屋さんで買って、キュウリのピクルスやサラダと一緒にブレッドやブレーツェルを食べるだけと、こちらも比較的質素です。

 また、スイスに隣接している南部付近ではサヴォワ料理を経験しましたが、基本的にシンプル。どれもさまざまなチーズをふんだんに使いますが、それぞれ決まったスタイルがあります。タルティフレット(炒めたタマネギとラードン、ニンニクとゆでたジャガイモを生クリームで和え、特産のルブロションチーズをのせてオーブンで焼く)や、おなじみのチーズフォンデュ、ラクレット(チーズを熱で溶かし、ジャガイモや野菜、ハムなどと一緒に食べる)などが有名どころでしょうか。

 もっと手の込んだもの、凝ったものがフランス家庭料理なのかと思いきや、このような素朴でシンプルな料理もあり、意外に親しみやすい部分があります。また、私がお世話になった家庭では、朝ごはんで出てくるホットミルクが日曜日の夜ごはんに再登場しました。

 日曜日はもともと休息のイメージが強いので(ショップもスーパーマーケットもほとんど閉まります)、時間がかかる大がかりな料理は極力せず、ささっと済ませられるものでOK。食べすぎてしまった1週間の胃の疲れも取れるので、ちょうどいいルーティンだなと思いました。

 ただし、これは地方によって違いがあると思いますが、やはり基本は肉がメインなことに加え、スーパーで発見できるレディミールの種類もイギリスに比べたら意外に少なめです。日本やイギリスに住んでいたときのように、「今日は疲れたからレディミールで、しかも自分じゃ作りにくいグリーンカレーにしよう!」というような、思いつきで献立を決めることはあまりできません。

 このような点で、朝ごはんも夜ごはんもバランス良く、自分の好きなようにバラエティ豊かな食生活ができる日本のすごさを、ここでも改めて感じてしまいます。

(Moyo)

Moyo(モヨ)

新卒採用で日本の出版社に入社するも、心身ともに疲弊し20代後半にノープランで退職。それまでの海外経験は数度の旅行程度だったが、イギリスへ語学留学ののち移住した。そのまま、あれよあれよと7年の月日が経ち、現在はフランスに在住。ライター、エディター、翻訳家、コンサルタントとして活動している。最近ようやくチーズのおいしさに少し目覚める。