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仕事・人生

「茶の心をパリで伝えたい」 フランスで初の茶懐石店をオープンし、ミシュラン一つ星を獲得 茶懐石に目覚めたきっかけ

公開日:  /  更新日:

著者:Miki D'Angelo Yamashita

高校卒業後、京都の懐石料理の名店「瓢亭」で修業

 そんな由緒ある料亭で、経験ゼロの10代から修業を始めた秋吉さん。鍋磨きや運転手などから始め、ごはん炊きと器の洗い物が最初の担当でした。「若い世代の人たちが切磋琢磨する場で、みんながライバルといった環境でした。もちろん悩んだこともありましたよ」と振り返ります。

「瓢亭」では毎月1~2回、茶道の稽古があり、「一期一会」の心で料理を作る精神を「千利休の侘び茶」から習得したそうです。茶懐石は、派手なことはせず、シンプルなものを質素に出す侘び寂びの世界。茶懐石の基礎を学んでいきました。

 修業中は同世代の切磋琢磨に加え、14代目の高橋英一さん(※高ははしごだか)から学んだことや、老舗の名店だからこそできた経験も大きかったといいます。

「高橋さんからは、料理人としての精神だけではなく、茶道の基本、お花、技術だけでなく、茶道や華道、設えなど多くを学びました。出張仕事が多く、お寺、富裕層の個人宅での茶会やお茶屋さんに出入りする機会が多々ありました。華やかな世界のバックステージを覗いたり、政財界の著名な方とも会話をしたりする機会もあり、刺激的な毎日でした」

熱心な学び 6年目の20代で別館の料理長に

 さまざまな経験をしていくなかで、秋吉さんは、フランス料理の魅力に気づきます。リヨン料理を食べるために、国内のビストロへ通っていたそうです。いろいろな味を知って、「瓢亭」とは別のベクトルで料理を考えることで「『瓢亭』らしさ」とは何かを理解していくことも大切な要素だったといいます。

 ワインの勉強も開始。店で初のソムリエとなり、ワインセレクトを任されるように。後輩を育成、指導する立場になり、6年目には別館の料理長になりました。「たまたま先輩が卒業するタイミングでラッキーだっただけ」と、さらりと笑う秋吉さんですが、20代で老舗料亭のトップに就いた裏には、地道な努力と学びがあったからなのでしょう。

 次回は、どのようにしてパリのOECD公邸料理人の道が開けたかを語っていただきます。

(Miki D’Angelo Yamashita)

Miki D’Angelo Yamashita

コロンビア大学大学院国際政治学修士、パリ政治学院欧州政治学修士。新聞社にて、新聞記者、雑誌編集記者、書籍編集として勤務。外信部、ニューヨーク支局、パリ支局、文化部、書籍編集部、週刊誌にて、国際情勢、文化一般を取材執筆。