からだ・美容
春に眠くなりやすいのは理由があった 「上質な睡眠」で目覚めと日中もすっきり 医師解説
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教えてくれた人:樋口 直彦

春になると、不意に眠気が襲ってくることはありませんか。よく寝ているはずなのに、ぼんやりしてしまう――それは「睡眠の質」の低下によるものかもしれません。自身も「睡眠時無呼吸症候群」の治療経験があり、睡眠について詳しい樋口直彦医師に話を伺いました。
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春に眠くなりやすい理由
うららかな春の陽気に、日中眠くなる方もいるのではないでしょうか。春に眠気を感じやすい大きな理由として、次の3つが挙げられます。
1つ目は「日照時間と気温の変化」、2つ目は「新生活によるストレス」、3つ目は「花粉症の薬による影響」です。春はこれらの要因が複合的に重なって、体内時計や自律神経、生活リズムが乱れやすくなる時期といえます。
こうした乱れが原因で、脳内の覚醒を司る「オレキシン(覚醒ホルモン)」の分泌タイミングがずれてしまいます。すると、脳内のオレキシンの働きが夜間にも続いてしまうことで深い眠りが妨げられ、朝になかなか起きられなかったり、日中の眠気につながったりするのです。
質の良い睡眠のために実践できること
そこでカギになってくるのが、睡眠の「質」の向上です。「上質な睡眠」が取れているかの指標は、寝つきが良く、途中で目覚めず、朝すっきりと起きられること、そして日中に眠気が出ないことです。一方で睡眠の質が悪いと、入眠困難や中途覚醒、熟眠感の欠如などを伴い、日中の集中力や気分に悪影響を及ぼします。
もし睡眠の質に不安があるならば、質を上げるために、すぐに実践できることを紹介しましょう。
○寝室の環境を整える
寝室は、室温18~22度、湿度50%前後を維持し、遮光カーテンや静かな環境を整えることが重要です。また、寝具についても見直してみましょう。体に合ったマットレスや枕を使用することで、自然な寝姿勢を保ちます。身体的な負担を減らすことでオレキシンの覚醒刺激を抑え、睡眠の深さを向上させる効果が期待できます。
○ルーティン確立
毎日同じ時間に就寝、起床することで、体内時計(概日リズム)を整えましょう。就寝前のスマートフォンや強い光の使用は、オレキシンの活性化を促してしまうため、避けるのが賢明です。
○食事
トリプトファン、マグネシウム、GABAを含む食品は、睡眠ホルモン「メラトニン」の材料となり、オレキシンの働きを穏やかに抑える効果があります。おすすめ食材の代表格は、以下の通りです。
・トリプトファン:バナナ、豆腐、七面鳥
・マグネシウム:アーモンド、ホウレン草、玄米
・GABA:トマト、発芽玄米、ジャガイモ
たとえば、豆腐とバナナのスムージー、ホウレン草入り玄米チャーハン、ジャガイモのトマト煮など、料理に上手に取り入れてみてはいかがでしょうか。朝食にバナナを1本食べるだけでも十分です。
上記はいずれも簡単にできることですので、気軽に始めてみてください。「寝るために頑張らなければ」と、寝ることにストレスを感じては本末転倒です。リラックスして入眠できるよう、少しずつ改善してみてください。