仕事・人生
元宝塚トップ娘役の妻に任せきりだった家事と子育て 中山秀征さんが唯一口を出したこととは
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子どもの性格に合わせて叱り方を変える
最初は、叱り方についても夫婦間で揉めたという中山家。それぞれが、それぞれに言いたいことがあり、どのように子どもたちに伝えるかに違いがあったそうです。
「妻が叱っていると、僕が『そんな言い方しなくてもいいんじゃないか』と遮る。ふたりのけんかを見ながら、子どもが次の展開を待っているわけです」
そんな経験から、お互いに何かを伝えているときや叱っているときは、間に入らないと決めたそうです。4人の子どもたちは一人ひとりのタイプが違うため、みんなの前で叱ったほうがいいのか、あるいはひとりずつのほうがいいのか、悩むこともありました。
「この子にはこの言い方、あの子にはあの言い方、このふたりはセットでも大丈夫というように、子どものタイプにより妻も叱り方を変えて、一律ではない子育てをしていました」
怒りも含めて子どもたち全員の言い分を聞くことが大切
中山家は4人兄弟で、長男の翔貴さん、次男の脩悟さんは俳優に。ふたりとも野球好きで体育会系だそうです。三男、四男は世界の人たちとのふれあいに興味を持ち、海外へ留学。それぞれが自分の望む道を歩んでいます。
「子どもたちと話し合いは常にしていましたね。全員の言い分を聞くことを大切にしていました。ときには発散したいこともあるし、怒りもあるでしょう。それも含めて聞きます。それが家族への気配りかなと思います」
子どもたちに対しては“褒めること”を心がけているという中山さん。やってみたいことは、できるだけやらせてあげたい。一番困るのは、やりたいと言ってやめることだそうです。
「たとえば、けがをして野球ができなくなっても『野球に携われ。補欠だっていい、マネージャーでもいい。参加することに意義がある。最後までやるのが大事なんだ』というのが、うちの考え方です」
けんかはあっても、家族間の思いやりが大切
翔貴さんと脩悟さんは役者の道に。三男はこの春から大学へ進学。イギリスに留学している四男は高校生になりました。また、妻の白城さんはサンドブラストというガラス工芸に力を注ぎ、中山さんは書道の作品づくりと、それぞれがそれぞれの夢や目標に向かっています。
「兄弟が4人いるのは、いいことだと思うんですね。家の中にも社会があって、タイプが違う人間とつきあっていく。その経験を、社会に出てもうまく生かしてほしいと思います。家族間の気遣い、それぞれがそれぞれを思いやることも大切な基本です。その時代時代でまだ答えは出ていないけれども、けんかしながら、話し合いながら生活しています」
愛されキャラとして長年活躍し続けてきた秘訣は、自分軸ではなく相手軸で考えること。これが中山さんの気配りの原点です。コミュニケーションが苦手という多くの人が抱える悩みを、克服するヒントになるでしょう。

(Miki D’Angelo Yamashita)

Miki D’Angelo Yamashita
コロンビア大学大学院国際政治学修士、パリ政治学院欧州政治学修士。新聞社にて、新聞記者、雑誌編集記者、書籍編集として勤務。外信部、ニューヨーク支局、パリ支局、文化部、書籍編集部、週刊誌にて、国際情勢、文化一般を取材執筆。