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秋においしい「戻りガツオ」とは 初ガツオと何が違う? 栄養士に聞いた
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教えてくれた人:和漢 歩実

秋の味覚のひとつ、カツオ。この季節にとれるカツオを「戻りガツオ」と呼ぶことがありますが、春の「初ガツオ」と何が違うのでしょうか。栄養やおいしい食べ方、見分け方などを、栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。
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日本人になじみのあるカツオ 年に2度の旬がある
日本人とカツオの歴史は長く、縄文時代の遺跡である貝塚からカツオの骨が確認されています。税として納める海産物だった歴史もあり、日本人の暮らしに欠かせない魚のひとつです。
カツオは年に2度、旬を楽しめます。地域差はありますが、とれる時期によって呼び名が異なり、一般的に4~6月頃が「初ガツオ」、9~11月頃が「戻りガツオ」です。「上りガツオ」や「下りガツオ」と呼ぶ地域もあります。
太平洋などの温帯~熱帯海域に分布するカツオは、成長に伴い、黒潮に乗って群れで北上します。日本近海にやってくるのは春で、この時期にとれるのが春どりの初ガツオです。その後、北太平洋でイワシやイカなどの豊富なエサを食べると南下し、9月以降に再び日本近海に戻ってきます。この時期にとれるのが、秋どりの戻りガツオです。
戻りガツオと初ガツオで栄養に違いはある?
同じ魚ですが、とれる季節で味わいに違いがあります。これからの時期にとれる戻りガツオは、脂が乗っていて濃厚な味です。エサをたっぷり食べているためで、「トロガツオ」と呼ぶこともあります。一方、初ガツオはさっぱりとした味わいが特徴です。
栄養価での違いをみると、戻りガツオは水分が少なめでカロリーや脂質が多く、初ガツオは水分が多い分、カロリーや脂質が少なめです。日本食品標準成分表(八訂)増補2023年で数値を比較すると、次の通りです。
○戻りガツオ(秋どり)
エネルギー:150キロカロリー、脂質:6.2グラム、水分:67.3グラム
○初ガツオ(春どり)
エネルギー:108キロカロリー、脂質:0.5グラム、水分:72.2グラム
脂質が多いといっても、カツオの脂質は、近年注目されるオメガ3系脂肪酸で、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)と呼ばれるものです。DHAは脳機能の維持や記憶力向上に関与し脳を活性化、EPAはコレステロールや中性脂肪を減らして動脈硬化などを予防する効果が期待できます。現代人が積極的に摂取したい栄養素のひとつといえるでしょう。
このほか、戻りガツオのほうが、ビタミンAやビタミンDも多めです。ビタミンAは、目や皮膚の粘膜を丈夫にして免疫力アップを促す働きが。ビタミンDはカルシウムの吸収を助け、骨や歯の健康を維持する役割があります。
○戻りガツオ(秋どり)
ビタミンA:20マイクログラム、ビタミンD:9マイクログラム
○初ガツオ(春どり)
ビタミンA:5マイクログラム、ビタミンD:4マイクログラム