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秋になると「寂しい」と感じるのはなぜ? 心に大きな負荷がかかっている可能性も 精神科医に対処法を聞いた

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:松澤 美愛

秋になると寂しさを感じる…いったいなぜ?(写真はイメージ)【写真:PIXTA】
秋になると寂しさを感じる…いったいなぜ?(写真はイメージ)【写真:PIXTA】

 夏の開放的な雰囲気から一転、秋の訪れとともに「なんとなく寂しい」「人恋しい」と感じることはありませんか? 朝晩に感じる冷たい空気、あっという間に暗くなる夕暮れ──こうした季節の変化が、私たちの心に影響を与えているかもしれません。秋の寂しさは単なる気分のゆらぎなのか、それとも注意すべき心身のサインなのでしょうか? 神谷町カリスメンタルクリニック院長の松澤美愛先生に、詳しく伺いました。

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秋の寂しさは「季節性感情障害」かも?

「秋になるとなんとなく寂しく感じる」「人恋しくなる」、これは人間であれば誰にでも起こり得る本能的なものです。一方で、季節による変化の影響が大きく、その感情に振り回されたり、日常生活に支障が出たりする場合は「季節性感情障害(SAD)」「季節性うつ病」「冬季うつ病」などと診断されることがあります。

 基本的には誰にでも起こり得るものですが、以下に当てはまる人は注意が必要です。

○精神的傾向
 不安が強い性格、孤独を感じやすい人

○身体的傾向
 冷え性、更年期障害。これらに伴うことが多いため、性差としては女性に多い傾向

○社会的背景
 単身生活。新生活を始めて初めての秋を迎える人

○環境要因
 高緯度、もしくは日照時間が少ない地域に居住

 これらの背景や傾向がある人は、より影響を受けやすく、症状が強く出やすいとされます。

なぜ秋になると寂しくなる? 医学的な3つの理由

 秋特有の寂しさが生まれる原因は、さまざま考えられますが、主に以下のようなものがあります。

○気温差で自律神経が乱れやすい
 夏からの急な気温の変化により、体温調整がうまくいかず、自律神経に乱れが生じます。自律神経が調整できる一日の気温差は7度までといわれていますが、この時期は朝晩と日中の気温差が10度以上になる日も珍しくありません。そうなると、自律神経が調整できる範囲を超えてしまいます。自律神経の乱れから、不安や緊張を感じやすくなり、孤独を意識しやすくなると考えられているのです。

○日照時間が短く、ホルモンバランスが乱れやすい
 秋は、夕方になったと思うと、あっという間に暗くなります。東京都の場合、昨年の8月と11月を比べると、日没時間に2時間ほどの差がありました。このような日照時間の変化により、“幸せホルモン”と呼ばれるセロトニンの分泌が減少します。セロトニンはその別名の通り、気持ちを明るく前向きにし、集中力も増すなど、精神面に好影響を与えるホルモンです。その減少により、気分の落ち込みや疲労感、意欲低下などうつ症状が出やすくなります。

 一方、夜が長くなるため、メラトニンは増加しやすくなります。これは本来、睡眠を調整し、良質な睡眠に欠かせないホルモンです。しかし増加により分泌のバランスが崩れると、体内時計のリズムが乱れ、眠気やめまい、頭痛、ふらつきなど、さまざまな不調を感じる原因として考えられます。

○季節柄、プレッシャーを感じやすい
「夏休みが終わって2学期が始まる」「春から始めた新しい仕事に少しずつ慣れてきて、負荷が増える」など、秋は成果を求められやすい季節といえます。夏の開放的な雰囲気や楽しい長期休みから一転、朝晩に感じる暗さや冷たい空気が、プレッシャーをより強く濃く感じさせるのです。家族や友達とにぎやかに過ごすイベントが多い夏から、成果を発揮するためにひとりで過ごす時間が増える秋に移ることで、孤独を感じやすくなると考えられます。