からだ・美容
秋になると「寂しい」と感じるのはなぜ? 心に大きな負荷がかかっている可能性も 精神科医に対処法を聞いた
公開日: / 更新日:
教えてくれた人:松澤 美愛
放置しても大丈夫? 日常でできる対処法
先に述べた通り、こうした気分の変化は誰にでも起こり得るものであり、基本的には一時的なものと思って良いでしょう。なんとなく寂しいなど気分の変化を感じても、日常のなかで実践できる対処法があります。
○日光を浴びる
日照時間の減少と深い関わりがあるため、意識的に日光を浴びるようにして、セロトニンを増やしましょう。まず起きたら朝日を浴びる、日中は何かと理由をつけて外に出て日光浴。外出が難しい人は、可能な限り窓辺で過ごして日光に当たることでも、効果はあります。
○適度に体を動かす
気温差による自律神経の乱れ、プレッシャーを感じるときは、運動がとても効果的です。体を動かすことで、気分転換やストレス解消になりますし、何よりセロトニンの分泌を増やすことができます。セロトニンを増やすことで自律神経を整え、気分を前向きにさせることができるでしょう。
○バランスの良い食事を心がける
食生活も気分に大きな影響を与えます。セロトニンの材料となるトリプトファンを多く含む食品(大豆製品、乳製品、ナッツ、バナナ、卵、肉類、魚類など)を、積極的にとると良いでしょう。トリプトファン(必須アミノ酸)は体内で作ることができず、食事からの摂取が必要不可欠です。
○人とのつながりを増やす
ひとりで過ごす時間が増え、孤独を感じがちなこの季節だからこそ、友人や家族、パートナーなどと過ごす時間を意識的に持ち、人とのつながりを感じる時間を増やしましょう。外出の時間が取れない場合は、オンラインもうまく活用してください。
長引く場合は迷わず医師に相談を
ただし、その変化が長引いていたり、影響が大きく日常生活に支障が出ていたりする場合は、注意が必要です。また、自分では「普通の状態」「決しておかしくない」と思っていても、周りから「それは普通じゃないよ」などと言われる場合も注意しましょう。心身に不調をきたしていると、自分ではなかなか気づきにくく、周囲の人が先にその変化に気づくこともよくあります。
注意すべき主な症状は、気分の落ち込みや無気力感、過眠、極度な疲労感、体のだるさ、過食(とくに炭水化物や甘いものへの欲求)、集中力低下、社交性の低下や孤独感です。これらの症状が2週間以上続く場合は、先述のように「季節性感情障害(SAD)」「季節性うつ病」「冬季うつ病」などと診断される状態になっている可能性があります。
お伝えしてきたように、秋になると生じる気分の変化は、誰にでも起こり得るものです。一方で、それらは心身のサインとして出ているケースもあります。日々の生活で実践できる工夫をしつつ、気になることがあれば、迷わず医師に相談してください。
(Hint-Pot編集部)

松澤 美愛(まつざわ・みあ)
神谷町カリスメンタルクリニック院長。精神保健指定医。日本精神神経学会、日本ポジティブサイコロジー医学会所属。慶應義塾大学病院精神・神経科入局後、精神科専門病院、救急や総合病院でのリエゾン、国立病院、クリニック、企業など幅広い臨床現場で経験を積む。個人と社会の変化に応じた「こころのケア」を実践。2024年東京都港区虎ノ門に神谷町カリスメンタルクリニックを開院。精神疾患を抱える方が“自分らしさ”を取り戻すきっかけとなるよう、患者一人ひとりの背景に寄り添った診療を心がけている。
インスタグラム:charismentalclinic
