からだ・美容
銀杏に潜む危険性 「加熱すれば安全」は誤解? 中毒を引き起こす可能性も 食べるときの注意点を医師に聞いた
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秋の味覚として親しまれる銀杏。茶碗蒸しや素揚げなどで楽しむ方も多く、その独特のもちもちとした食感と風味が魅力です。一方で「銀杏は食べすぎると危険」と耳にすることがあり、さらに「加熱すれば毒性が消える」という説も広まっています。果たしてこれらは本当なのでしょうか。銀杏に関する正しい知識と安全な食べ方について、林外科・内科クリニック理事長で日本外科学会外科専門医の林裕章先生に伺いました。
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銀杏はナッツではなく糖質が主成分
銀杏は一見ナッツのように見えますが、実は、アーモンドやクルミとは成分が大きく異なります。ナッツ類は脂質が主体ですが、銀杏の主成分は糖質(炭水化物)。そのため、もちもちとした独特の食感が生まれるのです。
エネルギーは、100グラムあたり約168キロカロリーで、目安として1粒を約3グラムとすると、約5キロカロリーです。炭水化物のほか、カリウムやβ-カロテン、少量のたんぱく質も含まれています。糖質が主成分であるため、血糖値が気になる方や糖尿病で治療中の方は注意が必要です。一度にたくさん食べると血糖値に影響する可能性があるため、適量を守ることが大切でしょう。
漢方の世界では古くから咳止めや頻尿の改善などに用いられてきましたが、これらは伝統的な利用法であり、医学的な効果効能を保証するものではありません。銀杏は基本的に、風味や食感を楽しむ”嗜好食”として位置づけるのが適切です。
中毒の原因は「メチルピリドキシン」という物質
銀杏の食べすぎによる中毒は実際に報告されており、原因物質は「4‘-O-メチルピリドキシン(MPN)」です。MPNは、神経の興奮を鎮める「GABA(ギャバ:Y-アミノ酪酸)」という、神経伝達物質を作るために不可欠なビタミンB6と非常に似た構造をしています。
体内にMPNが入ると、ビタミンB6の働きを邪魔してしまい、その結果、脳内のGABAがうまく作れなくなります。GABAが不足すると神経が過剰に興奮しやすくなり、けいれんなどの神経症状が引き起こされるのです。主な銀杏中毒はGABA不足による神経症状で、食べたあと1時間から12時間くらいで症状が出ることが多いです。
銀杏中毒の神経症状で、最も重篤で危険なのはけいれんで、とくに小児に起こりやすいとされています。そのほか、めまいやふらつき、意識障害(ぼーっとする、呼びかけに反応が鈍い)、手足のしびれ、不穏(そわそわして落ち着かない)、さらには嘔吐、下痢などの消化器症状が現れることもあります。
銀杏をたくさん食べたあとに、このような症状が見られた場合は、すぐに救急車を呼ぶか医療機関を受診してください。とくに、けいれんや「意識がおかしい」様子が見られた場合は、一刻を争います。医師に「銀杏をいつ、どれくらいの量を食べたのか」を伝えてください。これが診断と治療の最大のカギになります。