仕事・人生
時間厳守や“報・連・相”が保育の質を変える 日本式マネジメントをインドネシアに 日本企業の女性の挑戦
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日本の保育や学校教育では、幼い頃から自主性や、周囲と協力する姿勢が自然に身につくといわれています。日本人の規律正しさや協調性に世界から注目が集まる一方で、これらの価値観を文化の異なる国で浸透させるのは、簡単ではありません。さまざまな分野で活躍する女性たちにスポットを当て、その人生を紐解く連載「私のビハインドストーリー」。今回は、東南アジアで“日本式保育”の普及に尽力する、ヒューマンホールディングス株式会社のユリコ デルフィタ バンバンさんにインタビューしました。異文化の中で“日本式保育”とマネジメントを成功させた推進力に迫ります。
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コロナ禍2年目に責任者に就任
インドネシア国籍ながら東京で生まれ育ったユリコさん。父が在日公館に勤務し、日本の学校教育のもと、幼少期を過ごしました。日本の短期大学からインドネシア教育大学へ編入したあと、2017年には日本企業へ就職。そこで身につけた日本式のチームワークやコミュニケーションは、のちに海外での運営に大きく生きることになります。
現在、ユリコさんが運営を担うスターチャイルドインドネシア園(ジャカルタ・クニンガン地区)は、首都圏を中心に運営している認可保育所「スターチャイルド」の海外第1号園として、2018年に開園。ジャカルタ在住の10か国以上の子どもたちが集う、国際的な園です。
順調にスタートした同園ですが、ユリコさんが就任した2021年には、大きな課題を抱えていました。その原因は、2020年に世界中を襲った新型コロナウイルス。行政から事業停止を命じられると、約1年間の休園を余儀なくされ、スタッフも全員解雇せざるを得ない状況だったのです。
日本式チームワークを海外で浸透させる難しさ

まさに“ゼロからの再スタート”。それでもユリコさんは、日本で学んだ「チームで動く」文化をベースに運営を再始動しようと動き始めます。ところがすぐに、その価値観が現地では“当たり前”ではないと気づきました。
「インドネシアでは『10時半ね』と言うと、10時半から11時くらいの間が『10時半』という感覚。日本人に比べて、時間に対する感覚がとてもゆるやかなんです。でも、園では時間を守ることがとても大切なので、そこは丁寧に伝えていきました」
突然のスコールなど、遅刻につながる事情も多いものの、「時間を守る」ことを徹底。日本の高品質な保育サービスを提供するうえで、時間厳守は基本です。スコールや渋滞といった不測の事態は「見越して行動しよう」と伝え続けることで、スタッフたちの意識も少しずつ変わっていきました。
