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いじめ拡散は「二次加害」 スマイリーキクチが「きれいごと」批判に猛反論、私刑が被害者を追い詰めるワケ

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム・佐藤 佑輔

私刑が横行する昨今の状況には強い危機感と懸念の思いも

拡散反対について、「きれいごと」「加害者擁護」という批判に正面から反論【写真:山口比佐夫】
拡散反対について、「きれいごと」「加害者擁護」という批判に正面から反論【写真:山口比佐夫】

 不本意な結末から18年。今年に入り、ネット上では少年同士の暴行動画が相次いで流出、インフルエンサーが動画を拡散させ、一部ではネット私刑が正当化される事態となっています。当時は法の不条理に絶望したというキクチさんですが、私刑が横行する昨今の状況には強い危機感と懸念の思いを抱いています。

「こういう話をすると決まって『きれいごとだ』『加害者擁護だ』という批判が寄せられるんですが、自分が私刑に反対なのは何よりも被害者のため。動画が拡散している今の状況をステップ1とすると、ステップ2が捜査を伴う事件化、ステップ3に起訴がありますが、その前の段階で加害者側の名前や住所が拡散されることで、すでに社会的制裁を受けているからと不処分になったり、減刑されたりという結果につながってしまうんです。加害者でありながら、同時に被害者として扱われてしまうわけです。検察としては、加害者は最後まで加害者のままで送致したい。加害者を守るためではなく、適切に裁かれるためにこそ拡散は悪手という話なんですが、これを理解できる人がなかなかいない。

 さらにステップ4として、刑事裁判の先に民事訴訟がありますが、『拡散で仕事がなくなったので賠償金が払えない』と加害者の逃げ得を許す口実にもなってしまう。もっと言えば、ステップ5として逆恨みの危険すらあります。カメラの前で暴行事件を起こすような人間はそもそもまともではないので、出所後に腹いせで報復してくることも十分考えられる。私刑で何もかも奪ってしまったら、いわゆる“無敵の人”を生み出すことにもつながりかねない。安易に正義のため、被害者のためと拡散する人たちは、その後のことを何も考えていないし、何の責任も取ってくれません」

 また、動画の拡散は加害者だけでなく、被害者の将来や人生にも深刻な影響を及ぼす「二次加害」になると指摘します。

「一度拡散された動画は半永久的にネット上に残り続けます。暴行を受けた子たちにも、いずれ恋人ができたり、結婚したり、就職したりする。そのときに恋人や同僚、あるいは未来の子どもに、自分がボコボコにされている姿を見られたいと思うでしょうか。実際に、被害者の方から動画を削除してほしいという訴えが上がっても、インフルエンサーがその声に取りあうことはありません。百歩譲って、被害者本人が拡散してほしいというならともかく、それを赤の他人である部外者が安易に行うべきではない」

 正義と制裁を履き違えた行為は、加害者の罪を軽くし、被害者の将来を傷つけることにもつながるとキクチさん。また、少年事件(未成年の事案等)は加害者更生の観点から慎重に対応することも忘れてはなりません。では、実際にいじめや暴行の被害に遭った際に、被害者はどのような手段で問題解決を図ればいいのでしょうか。後編では、長年各地の学校でいじめ問題についての講演会を行っているキクチさんが、具体的な解決策を提示します。

(Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム・佐藤 佑輔)