仕事・人生
「自分だけ楽しんでごめんね」 きこえない母をコンサートに誘わなかった後ろめたさ CODA女性が切り開いた新たな道
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「正しく訳すこと」だけがコンサート手話通訳の仕事じゃない
長谷川さんがコンサート手話通訳をする中で意識しているのは、正しく訳すだけでなく「この公演で何が届けられるか」という視点を持つことです。
「コンサートは歌詞だけでなく、アーティストの歌やトークなど、さまざまな要素が重なって作られており、アーティストや楽曲を知っているからこそ受け取れるものもあります」
同じ曲でも、初めて聞く人と何年も聴き続けてきた人とでは感じ方が違う。だから、何をどこまで伝えるのか判断をすることも、コンサート手話通訳の職務だと長谷川さんは思っています。
また、歌詞がない曲では、曲の中にあるさまざまな情報や公演内でその楽曲が持つ役割、ステージ上で起きていることなどを通訳するそうです。
2024年3月までにボランティアとして約150本のコンサート手話通訳に携わってきた長谷川さん。2024年4月には、改正障害者差別解消法の施行により、民間事業者にも合理的配慮の提供が義務化されました。以降、主催者や制作側からの相談を受けることが増え、業務委託としてコンサート手話通訳を任される機会も多くなりました。
その一方で、数分の楽曲を通訳するため、膨大な時間をかけて準備していることや、MCの通訳の準備にも多くの時間を要することは、まだあまり知られていません。
「参考にできる事例が少ない分、大変なことは多々ありましたが、私にとってはどの経験も欠かせないものでした」
アクセシビリティが「ごく自然な当たり前」になる社会へ
現在、長谷川さんは株式会社CSLIの代表として、コンサートやイベントにおけるアクセシビリティ(※年齢や障害の有無、利用環境に関係なく、誰もが同じように情報やサービスなどを利用できる状態)の向上に励んでいます。
コンサート手話通訳の導入だけでは解決できない課題も多いため、来場者と主催者双方の声に耳を傾け、公演ごとに必要なアクセシビリティを考え、実施しています。

「2025年には、舞台作品のアクセシビリティにも携わりました。その作品は池袋演劇祭で賞を受賞し、活動の幅がより広がりました。コンサートに手話通訳があることが、ごく自然なことになったらうれしいです」
将来的には特定の人の努力だけに頼ることなく、アクセシビリティがごく自然にイベントへ組み込まれている社会の実現を目指したいと、長谷川さんは意欲を燃やします。