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メーガン妃とヘンリー王子 見え隠れするダブルスタンダード “暴露本”伝記の発売は英王室を揺るがすのか

公開日:  /  更新日:

著者:森 昌利

英王室の懸念 “暴露本”で人種差別のレッテルを貼られる

ヘンリー王子とメーガン妃【写真:AP】
ヘンリー王子とメーガン妃【写真:AP】

 ただし、東洋人として英国に30年近く暮らし、当地で白人の妻との間にできた2人の日英ミックスの子どもを育てた自分自身の経験から言うと、この国に今も人種差別の空気があることは否定できない。

 無論、この醜悪で邪悪な空気は年々薄まっているように感じる。しかし、個人的な見解だが、積年の常識だった「白人優位」の歴史観や概念は、なかなかそう簡単には変わらない部分もあると言える。

「Finding Freedom(自由を探して)」の中にも、白人の父と黒人の母を持つメーガン妃が差別的と感じるような、さまざまな嫌がらせがあったという主張があるようだが「それが完全になかった」と、きっぱりと言い切るのは難しいだろう。

 英王室が最も懸念するのは、ヘンリー王子がウイリアム王子の“あの女の子”発言に傷付いたなどというものではなく、きっとこの部分ではないだろうか。

 実際BLM(ブラック・ライブズ・マター=黒人の命の大切さ)の人種差別に対する抗議運動は英国でも盛んになり、ロンドンでは過去に奴隷貿易で財を成したとされる歴史的人物の銅像が破壊された。

 一方で、何者かがサッカーのプレミアリーグの試合会場の上空に「ホワイト・ライブズ・マター=白人の命の大切さ)という横断幕を広げた飛行機を飛ばして波紋が広がった。

“王室危機”ととらえる報道も 単なる出版では終わらない?

 もし、この“暴露本”とも言える伝記「Finding Freedom(自由を探して)」(メーガン妃とヘンリー王子が協力していないのなら、今後は「自伝」という言葉は使えないのだが……)から、英王室には「人種差別的な気分がある」というレッテルが貼られたら、それは本当に大事になる。

 英国では、貧富の差を作る階級社会の象徴として王室があると主張する一派がいる。その反対派にとって「人種差別」というカードは、いわばアドバンテージとも言えるかもしれない。

 実際、英国内では「Finding Freedom(自由を探して)」出版は“王室危機”ととらえる報道も続いている。ダイアナ元妃のパリの悲劇で、国葬を否定したエリザベス女王に大きな憤怒が巻き起こって以来のことだと伝えている。

 さまざまな時勢が絡み合ったこのタイミングでの“暴露本”伝記の出版によって、ヘンリー王子の実家である世界的な名家の崩壊と終焉の恐れが出てきたことも否定できない。

 当のメーガン妃とヘンリー王子は、単に「かわいそうなのは私たちの方」と自分たちのダブルスタンダードの正当性を世の中に主張したかっただけかもしれないが……。

(イギリス・森昌利/Masatoshi Mori)