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ロッテ美馬投手の妻アンナさん 先天性欠損症の我が子と歩む日々 「この子じゃないとダメだった」

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・佐藤 直子

勇気をくれた親友、そして夫の言葉…「俺たちの間に生まれてきてくれて良かった」

 途方に暮れる一方で、先天性欠損症という障がいがどういうものなのか、インターネットやSNSを通じて調べることも始めました。すると、そこには障がいを隠さずに生き生きと人生を楽しむ人々と家族のまぶしい姿があったといいます。また、ミニっちと同じく、先天性欠損症で右手がないパラ水泳選手の一ノ瀬メイさんのインタビュー記事にも出会いました。

「記事の中で、一ノ瀬さんは『自分を障がい者だと思って生きたことがない』というようなことを言っていたんです。それを見て、本当にすごいなと思うと同時に、自分が情けなくなっちゃって。障がいを持つことは決して恥ずかしいことじゃない。それを隠すのは嫌だったので、まずは大学時代の親友たちにミニっちの話をしました」

 ミニっちには右手首から先がありません。障がいを持って生まれてきたことが、今はすごくつらいし、苦しい。少し心配かけちゃうかもしれないけど、今度抱っこしにきてね──。

 アンナさんが送ったメールに、親友の1人はこんな言葉を返してくれたそうです。

「大変だったね。アンナの苦しみを100%分かってあげることはできません。でも、人間って五体満足で生まれても、結局はないものねだりをしちゃうんだよ。私だって、アンナみたいに歌を歌える声で生まれたかったし、○○ちゃんみたいにクリクリな二重に生まれたかった。だから、右手がないミニっちは『いいな、手がある人』って思うかもしれないけど、そんなに大きな違いはないんじゃないかな。だから、気にするな! みんなでミニっちを育てていこうよ」

 この時、アンナさんは「すごく勇気をもらったし、隠すのはやめようと思いました。私が隠していたら、ミニっちも隠さなければいけないことなんだって認識してしまうかもしれない。それは絶対に嫌だなって」と、心に強く思ったそうです。少なくとも、妊娠中からインスタグラムを通じて声援を送ってくれた人たちには伝えたい。

 ただ、SNS上での書き込みは、不特定多数の人に伝わります。そこでプロ野球選手でもある旦那さんの意見を聞いてみると、「いいじゃん、出そうよ。全然恥ずかしいことじゃないし」と即答だったといいます。

「旦那さんに聞かれたんです。『お腹の中にいる時に、障がいがあるって分かっていたら産んでなかったの?』って。『お腹の中で分かっていたかどうかって、生まれてきた時に自分たちの覚悟ができていたかいなかったくらいの差でしょ。俺は絶対に産んでほしかったし、障がいがあってもなくてもミニっちはミニっちであることに間違いない。俺たちの間に生まれてきてくれて良かったじゃない。この子じゃないとダメだったんだよ、俺たちは』って言ってくれて、すごく気が楽になりました。この人がいるから、私はいろいろなことを隠さず、さらけ出しても大丈夫なんだって」

 インスタグラムでの報告用に選んだ写真は、ご夫婦が両手で小さなミニっちを包み込む、家族の愛情にあふれた一枚でした。モノクロの写真中央で目をつぶるミニっちの右手はありのまま。この一枚を選んだ背景にも、ご夫婦の想いが込められています。

「障がいを持つことを変な目で見る人たちは、隠せば隠すほど見たがる。だから、もう最初から見せちゃおうよって。そっちの方が私たちも気持ちいいし、ありのままを受け入れてくれる息子に育ってもらうためには、その方法が一番いいんじゃないか。そう思って、右手が見える写真にしました。

 もちろん、心配の声もいただきました。でも、いただいたコメントの多くが、自分たちの勇気がいろいろな方の勇気につながったんだな、と思えるもので、やっぱり隠さなくて良かったんだって思いましたね」