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マウスピース矯正には向き不向きがある! 矯正歯科単科開業医が語る“本当” 抜歯が必要な例とは?
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抜歯が必要になる症例とは?
とはいえ、患者としては抜歯を避けたいもの。それに、抜歯が必要な症例って、よっぽど重度なのでは?
「そうとは限りません。日本臨床矯正歯科医会が過去に実施した調査では、1年間で抜歯した患者さんは58.5%でした。患者さんの多くは恐らく、抜歯してもしなくても結果は同じだと考えているのではないでしょうか。しかし、結果が同じなら歯科医師は抜歯しないと思います。抜歯してもそれを超えるメリットがあると判断しているからなんです。抜歯しないことにとらわれて治療(法)を決めてしまうことは、非常に危険だと思います」
そこで気になるのは、抜歯が必要になる症例です。
「一概には言えませんが、たとえば歯並びのデコボコ。生える場所(アゴ)と生える歯のサイズ的な不一致が原因で起きるものなので、大人の患者さんの一般的な矯正では歯を抜いて場所を作るか、歯を削って入るようにするかの2択です。大人は顎を大きくすることができませんから」
歯を削る量にも限界があり、その結果抜歯となる場合もあります。歯の本数を減らして並べる場所を作り、その上で歯を正しい位置に動かすわけです。一方で、歯を抜かずに歯を動かしてもデコボコは取れることはありますが、サイズ的な不一致は残り、他の問題が生じることがあるようです。
「マウスピース型矯正装置で治療を受けた後のやり直しで来院された患者さんでは、歯が全体的に前に出てしまっている例がありました。この場合、もし骨から歯の根がはみ出していると、やり直しをしようにも手をつけるのが大変難しくなります。
また、デコボコを治療するために歯を前に出すと、前歯は唇が押さえる力と舌が押し出す力が釣り合った場所にあるので、唇の力で元の位置に戻ることが多いのです。すると、またデコボコになってしまいます。さらに他には、歯列を横に広げて場所を増やした際、噛み合わせが悪くなった例もありますね」
となると、器具とはあくまでも「矯正治療の一部」であり、どの器具をどこのタイミングでいかに使うかを合わせてすべてが「治療」と考えられます。
「矯正をきっちりと勉強した矯正歯科医は“この治療に対してゴールはこの辺にすべき”と見えていますから、マウスピース治療では治らないと判断した場合でもそれを説明します。
またマウスピース型矯正装置でうまく治らなかった場合でも、従来通りの矯正治療の経験が十分ある矯正歯科医ならばリカバリーが可能なんですよ。まずは矯正歯科単科開業医で、マウスピースが適用されるべき症例なのかをしっかり見てもらった方が、間違いは少ないと思います。マウスピースを強く希望するなら、セカンドオピニオンをお勧めします」