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エリザベス女王とサッチャー氏はホントに対立していたの? 「ザ・クラウン」をもっと楽しむ基礎知識
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11月の配信開始直後から大きな話題を呼んでいるネットフリックスオリジナルドラマ「ザ・クラウン」シーズン4。新キャストの中で見逃せない1人といえば、エリザベス女王にとって“9人目の首相”、英国初の女性首相であるマーガレット・サッチャー氏です。ドラマでは時に女王と対立するなど圧倒的な存在感を放っていますが、その描き方には多方面からあらゆる意見が噴出しています。女王との対立はどこまでホント? 主要な現地報道などから検証してみました。
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2人の溝を明らかにした記事は実在 記事を担当した記者の意見は?
保守党が野党だった1975年に同党の党首となり、1979年の総選挙を大勝に導いて第71代英国首相に就任したマーガレット・サッチャー氏。「ザ・クラウン」シーズン4では、君主制のトップである女王と政権のトップである当時のサッチャー首相が、静かに火花を散らす様が描かれています。とはいえ実のところ、2人の関係については諸説が存在しているようです。
英高級紙「インディペンデント」が2013年に掲載した記事によると、サッチャー氏の元補佐官は常々、首相在任中におけるエリザベス女王との関係が「緊密」なものだとは表現していなかったとされています。また情報筋は、在任中の政策については、女王よりもエリザベス王妃(クイーン・マザー)が好意的に受け止めていたと語ったそうです。
実際の関係を垣間見る鍵は、1986年の英連邦首脳会議を描いたシーズン4の8話かもしれません。具体的には、人種隔離政策「アパルトヘイト」を掲げる南アフリカ共和国への経済制裁、その是非をめぐる女王(賛成派)とサッチャー氏(反対派)の対立です。ドラマでは女王が王室報道官にメディアへの情報リークを指示し、英高級紙「タイムズ」の日曜版「サンデー・タイムズ」が2人の溝と首相に対する批判的な意見を記事にしました。
この記事は実在しており、各メディアが溝をほのめかす中、初めて明言する内容でした。同紙は今年11月、担当した記者本人が当時を振り返る記事を公開しています。この記事には、女王が英連邦の長として団結を重要視する一方、米国との関係を気にかけていたサッチャー氏は経済制裁による弊害を懸念していたとする部分がありました。また、他の政策についても王室側は「国の分断を招く」として疑問を抱いており、実際の対立はもう少し根深いものだったとする見解です。
王室報道官のリーク内容については、女王と王室内の意見を反映していたことは間違いないとする一方、女王の指示については「なかった」との考えのようです。さらにこの対立は永続的なものではなく、サッチャー氏は王室への敬意を決して捨てなかったともしています。多数の裏話や見解がユーモアを交えて軽妙に綴られている内容ですので、ご興味がある方はぜひどうぞ。