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先天性欠損症の子を持つ母2人が対談 美馬アンナさんが気付いた自身の「偏見」
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「おてて治ってない」…娘に説明しながら自分に言い聞かせた言葉とは
浅原:実は「Hand&Foot」の会員さんがシェアしてくれて、この対談にお声がけいただく前に、美馬さんの記事を拝見していたんです。
アンナ:ありがとうございます!
浅原:出産当時、私もまったく同じ気持ちでした。私の娘は右手の指が3本で生まれてきたんですけど、知った時は時間が止まったような、どう表していいのか分からない感じで。「何かしたんじゃないか」って自分のことも責めましたし、「小学校に入ったらどうするんだろう? 就職は? 結婚は?」って生まれた日から考えてしまいました(笑)。
アンナ:本当にその通り。私もお風呂に入っていても「シャワー持ちながらシャンプーってどうやるの?」ってマイナス思考になってしまって。「これはできるよね!」という気持ちは1ミリも……。
浅原:なかったです! 街で障害を持つお子さんを連れたご家族とすれ違った時、みんな笑って幸せそうに歩いていらしたのを思い出して、「どうしてあんなに元気になれたんだろう?」と思ったくらい、どうやって乗り越えればいいのか、本当に分からないくらい落ち込みましたね。
アンナ:分かります! 浅原さんは娘さんが生まれから気付かれたんですか。
浅原:そうです、出産した後に。帝王切開で出産したので「麻酔がまだ切れていないから、これは夢なのかな」と思ったくらい現実味がありませんでした。
アンナ:実際に前向きになれたのは、いつ頃でしたか?
浅原:ちょこちょこきっかけはあるんですけど、気持ちがすべて吹っ切れたというか、完全に前向きになったのは、娘が3歳の時です。娘の右手は3本ある指のうちの2本がくっついていたので、1歳の時にその2本を切り離す手術をして、3歳の時に一番親指側にある指を親指の位置にずらす手術をしました。手術が終わってギプスが取れた時に、娘が「おてて治ってない」って言ったんですよ。5本指になると思っていたみたいで。私が何回も何回も説明したんですけど、やっぱりちゃんと伝わっていなくて「5本になってない」って言うんです。
そこで娘に「りっちゃんのおてては、もうずっとずっとそのまんまなんだよ」と説明すると同時に、自分にも言い聞かせていました。それまでは「5本にしてあげたい」ってどこかで思っていたんですよね。でも、この時に「そうだ、娘はこれからずっとこの手で生きていくんだ。私はそれを支えていこう」とはっきり自覚しました。だから、3年くらいかかっています。
アンナ:そうだったんですね。時間はかかるものですよね。
浅原:はい。それまでは1日のどこかでふと考えてしまったり、人がいっぱい集まるところに行くと人の手ばかり見てしまったり。「こんなに人がいっぱいいて、みんな指が5本なのに、何でうちの子だけ……」という気持ちがありました。会員さんの声を聞いていると前向きになるまでの期間はそれぞれですね。
ただ、落ち込んだり前向きになったりを繰り返すうちに、子どもがどんどん成長して、何でもできることが分かってくるんです。今、娘は小学2年生ですけど、普段は右手の指が3本だってことさえ忘れてます(笑)。
アンナ:子どもってたくましいですね。息子はまだ保育園にも行っていませんが、学校に行き始めると親の目の届かないところで過ごすわけじゃないですか。もちろん心配ですし、子どもが傷付く時もあるはず。だけど、「Hand&Foot」のインスタグラムから子どもたちがたくましく乗り越えていく様子が伝わってくるので、その姿に勇気付けられます。