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「義手は手ではなく、子どもの体と心を育てる道具」 美馬アンナさんが得た気付き

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・佐藤 直子

ロッテ美馬学投手の妻アンナさん【写真:Hint-Pot編集部】
ロッテ美馬学投手の妻アンナさん【写真:Hint-Pot編集部】

対談シリーズ第3回 義肢装具士の中村隆さんに聞く子ども用義手の今

 女優・タレントとして活動する美馬アンナさんは2019年、第1子となる男の子「ミニっち」を授かりました。その我が子が先天性欠損症のため右手首から先がなく生まれてきたことをきっかけに、プロ野球の千葉ロッテマリーンズで活躍する夫・美馬学(みま・まなぶ)投手とともに、野球やスポーツを通じて健常者と障害者をつなぐ活動を目指して模索しています。

 障害を持つ子どもの家族が意見交換や情報共有できる場所を作りたい。そう願うアンナさんは今、さまざまなジャンルの方との対談を通じ、活動のヒントや学びを得ています。

 お届けしている対談シリーズ第3回は、国立障害者リハビリテーションセンター(以下国リハ)で義肢装具士として働く中村隆さんが登場。今回の中編では、義肢製作に携わったYouTuberの山田千紘さんや義手を使い始めるタイミング、発信する意義などについて話します。

 ◇ ◇ ◇

担当した患者がYouTuberとして情報発信 中村さん「期待しかありません」

司会:最近では国が子どもの義手普及に力を入れ始めたというお話でしたが、実際にリハビリに通うお子さんは増えましたか?

中村隆さん(以下中村):はい、ここ10年くらい増えています。10年ほど前、兵庫県立総合リハビリテーションセンターが「子どもに義手を」と新聞で訴えたりキャンペーンを張ったりしたおかげで、ムードが盛り上がったんです。国リハでも専門外来を設けて対応を強化すると、口コミで広まったり「ウェブサイトで見た」と診察に来たりする人が増えました。とはいえ、年間平均で5~6人くらいですが。

アンナ:やはり情報を求めている人は多いということでしょうね。

中村:四肢の形成不全や、特に切断を隠そうとする文化はまだまだある。これは大問題だと思いますが、インターネットが進歩したおかげで自動的に崩れ始めています。私たちが関わった方の中には、YouTuberになって義手・義足について情報発信している方もいますよ。

アンナ:あの方、山田千紘さんですね! 私の両親に教えてもらって、YouTube「山田千紘 ちーチャンネル」観てます!

中村:山田くんは20歳の時に両脚と右腕を切断する大事故に遭いました。彼が国リハに来た時、私が義足、もう1人の担当者が義手を作ったんです。彼の根性はピカイチでしたね。本当にきれいな動きをする人で、義肢を使った動きを短期間でマスターしました。

 国リハでは職業訓練施設にも通って、今は大手企業の会社員です。さらには義肢メーカーと契約してモデルをしたり、YouTuberになったり。いろいろ葛藤はあったと思いますが、今の姿を見る限りでは期待しかありませんね。

アンナ:山田さんは自分が手足をなくしたこともポップに話すので、「悲しい」「かわいそう」などと思わずにYouTubeを観ることができます。あの飛び抜けた明るさはどこから来るんだろう、彼の心はどうやって乗り越えてきたんだろう……そう考えると、自分がちっぽけな人間に思えるというか、勇気をもらえますね。

中村:国リハに来る新患の方にも「山田さんのYouTubeを見ました」という方が増えているので、とても良い活躍をしてくれていると思います。機会があれば、ぜひ対談してみてください。

アンナ:はい、ぜひお話ししてみたいです!