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顧客からの悪質クレームや不当要求…カスハラと対決する現場の声「無自覚の人が多い」
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クレームを受ける側の企業は用意が不十分…その理由とは
先に触れたように、行政と企業に対し具体的な行動を求める声は多いようです。消費者庁は2021年2月、「消費生活相談における相談対応困難者(いわゆるクレーマー)への対応マニュアル」を作成しました。厚生労働省では今後、カスハラに類する「悪質なクレーム」について、企業が取るべき対策を指針で明示する予定となっています。
では、勤務先ではどうでしょうか? マニュアル作成の状況に関する設問を見てみると、2019年度の調査と比較して進んでいるどころか、逆に後退していると思われる結果に。
【あなたがお勤めの会社では顧客対応全般に関するマニュアルは作成されていますか?】※数字は「今年度調査:2019年度調査」
「作成されておらず、作成予定もない」58.3%:51.6%
「作成されていないが、作成予定である」9.9%:17.1%
「作成されている」31.7%:31.4%
「作成されている」と回答した人たちも、マニュアルの内容に満足しているかは別問題のようです。作成されたマニュアルがカスハラに対応しているかを尋ねる設問では、「対応しており、内容も十分である(具体的な内容も書かれている)」が33.6%、「対応しているが、内容的に不足している(具体的な内容は書かれていない)」55.0%でした。
また、カスハラ対応での課題を尋ねる設問(複数回答可)では、「対応者個人の対応力のスキルアップ」(36.4%)が最も多く、次いで「対応できる人材の育成」(32.9%)、「対応マニュアルの整備」(24.7%)と続きました。直接お客様と接する担当者個人のスキルに頼る傾向にあり、担当者の負担が大きいことがうかがえます。
同社によるとカスハラには明確な定義や行為類型がなく、企業や論者によってまちまちの状況だそうです。勤務先企業がカスハラの定義(対応ポリシー)や行為類型を明確にしているかを尋ねる設問でも、「定義も類型も明文化されている」はわずか4.9%、「カスタマーハラスメント対応ポリシーは明確に打ち出している」は6.1%にとどまりました。
定義や行為類型が曖昧な状況では、実際に現場で対応する担当者自身がカスハラを判断できず、適切な対応が取れないケースも出てくる可能性があります。カスハラや不当要求の対応に関する実践的な研修の有無を尋ねる設問でも、「そもそも研修やOJTのような教育制度がない」(42.8%)が最も多い結果となりました。
カスハラの認知度はまだ低く、企業側だけでなく、実際にカスハラをする顧客側も「自分の行為がカスハラである」との認識がないことが多いのだと思われます。顧客あっての企業ではありますが、だからといってその優位性を利用して何をしてもいいわけではありません。今後、社会全体のカスハラに対する意識が高まっていき、状況が改善されていくことを期待したいですね。
(Hint-Pot編集部)