カルチャー
有村架純の“とらえどころのなさ”が光る ついに完結した『るろうに剣心』での“役割”とは
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巴はもう1人の剣心だったのかもしれない
この流れを踏まえて再度、有村架純の果たす役目を考えてみた。剣心の存在を肯定し、寄り添い、活かそうとする巴。そんな巴はもう1人の剣心なのではないかと。『3月のライオン』の香子もたぶん同様。もう1人の零だ。
清濁併せ呑む存在である人間の葛藤を表現する時、もう1人の言い分を言語化、映像化するならどう描くか。インパクトを持って描くなら一番近い異性として配置する。そうすることでテーマが浮かび上がる。大友監督はそんな風に考えたのではないだろうか。
有村は主人公が持つ別の一面を表現する存在。そう考えるとしっくり来る。どんな作品の主人公にも独自のテーマを託し、それを読み取ることが面白い大友作品。それを仕掛けるために有村架純のパブリックイメージを逆利用したのだろう。
きっと有村も共犯者だ。大友作品における有村の掴めなさは“共犯者”として役割を明らかにさせないことにあるのだと思う。
『るろうに剣心 最終章 The Beginning』全国ロードショー公開中 配給:ワーナー・ブラザース映画(c)和月伸宏/集英社(c)2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会
(関口 裕子)
関口 裕子(せきぐち・ゆうこ)
映画ジャーナリスト。「キネマ旬報」取締役編集長、米エンターテインメントビジネス紙「VARIETY」の日本版「バラエティ・ジャパン」編集長などを歴任。現在はフリーランス。