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北欧雑貨と擬似家族 今時を表すキーワードが綴る人間ドラマ『青葉家のテーブル』

著者:関口 裕子

『青葉家のテーブル』TOHOシネマズ日比谷ほか、全国順次公開中 配給:エレファントハウス(c)2021 Kurashicom Inc.
『青葉家のテーブル』TOHOシネマズ日比谷ほか、全国順次公開中 配給:エレファントハウス(c)2021 Kurashicom Inc.

 変化を続ける社会状況の中では、絶えず“順応すること”が求められます。変化の種類は多種多様。時には、重大な決断を迫る大問題として降りかかることもあるでしょう。社会は発展しても、人生が“山あり谷あり”であることは変わりありません。そこで一体、どうすれば山を乗り越えることができるのか? 社会が変化しても人が必要とするものは何か? 「北欧雑貨」と「擬似家族」という今時を表すキーワード2つが登場する映画『青葉家のテーブル』には、私たちが今を生きるための“小さな気付き”が隠されているようです。映画ジャーナリストの関口裕子さんに解説していただきました。

 ◇ ◇ ◇

北欧雑貨のECサイト運営企業が製作した“異色作”

 血のつながりのない者が一つ屋根の下で暮らす疑似家族。社会的状況の変化を鑑みると必ずしも血縁と暮らすことがベストとは限らないことから、疑似家族はドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」(カンテレ・フジテレビ系)や漫画「SPY×FAMILY」(集英社)のようにモチーフとなることも多く、実際にそうした生活を送っている方の話も耳にするようになった。もちろんプラスなことも、ネガティブなこともあるだろうが。

 西田尚美が主演する『青葉家のテーブル』もそんな疑似家族の日々を描いた映画だ。シングルマザーの青葉春子(西田尚美)は、中学生の息子リク(寄川敬太)、年下の飲み友達であるめいこ(久保陽香)とその彼氏で小説家のソラオ(忍成修吾)と東京の郊外で4人暮らし。そんな青葉家に20年来の友達、知世(市川実和子)の高校生の娘、優子(栗林藍希)が夏期講習のために訪れる。

 生活雑貨のECサイトを運営する春子の家はゴージャスではないが、居心地の良さそうな(たぶん)3LDK。いや、3LDKもある時点で十分ゴージャスではあるが、好きな家具や生活雑貨に囲まれ、生活のクオリティも高そうだ。

 実はこの映画、北欧雑貨をはじめとするライフスタイル提案を行うECサイト「北欧、暮らしの道具店」の運営会社が製作した。だからといって、これ見よがしに北欧雑貨がフィーチャーされるわけではない。むしろそこに集う人間ドラマに引き込まれているうちに、「あれ、いつの間にか終わった?」と思うくらい。

 それもそのはず、映画には同サイトの運営会社「クラシコム」で取締役・店長を務める佐藤友子さんの生き方が多分に反映されており、ある種のリアルさがあるからだ。

人間ドラマをきちんと描く作品として完成した理由とは

 佐藤さんは2007年、兄である代表取締役社長の青木耕平さんの誘いで「北欧、暮らしの道具店」を立ち上げた。商材を北欧雑貨に決めたのは、需要が高まっていたこともあるが、以前も北欧を訪れたことのあった佐藤さんが人々の暮らしや働き方に影響を受けていたことも大きいという。

 朝早く出勤するが17時には帰宅し、家での暮らしを楽しむライフスタイル。当時、日本での働き方に疑問を持っていたという佐藤さんは、このように日常を豊かに暮らす提案を日本でできないかと考えたのだそう。それも無理をすることなく普段の生活サイクルの中で。

『青葉家のテーブル』は当初、開店10周年に際し“お客様に感謝を伝えるツール”を考えたところからスタート。それが4話からなるウェブドラマ「青葉家のテーブル」(2018)になり、今回の映画版にもつながった。商品の見せ方に重きを置く(プロダクトプレイスメント)ものでなく、人間ドラマをきちんと描く作品として完成したのは前述した“まず暮らし”の社風があるのだろう。

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