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日本の子どもたちはなぜ義手を使わないのか? 東大病院医師が語るその理由
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健常児も障害児も一緒が普通「ハビリスジャパン」の活動とは
アンナ:それは迷いませんね。今日は先生のお話を伺って、かなり心に響きました。他の部分の骨や筋肉は普通に成長するものだと思っていたので、まったく病院にも行っていませんでしたし。
藤原:私にも子どもが3人いて、病院へ来る子どもたちと同世代。同じジェネレーションの人間として、特にお母さんの気持ちがひしひしと伝わってきます。医師として義手を紹介したり、できる限りのサポートをさせていただきたいのですが、医療機関としてできることが限られてしまいます。
例えば、まず運動用義手は公的には処方ができません。そういう背景もあり、「ハビリスジャパン」を作りました。医療でできることは病院の医師としてサポートしつつ、そこでできない部分はハビリスジャパンとしてサポートする形ですね。
アンナ:なるほど。ハビリスジャパンでは運動用義手を貸し出したり、これまでも義手を使って参加する運動教室や料理教室など開催なさったりしていますね。
藤原:はい。そもそも、子どもたちは白衣を着た人がたくさんいる病院ってあまり好きではないので(笑)。そこで、白衣は着ていないけれど、医師や作業療法士、義肢装具士など医療関係者も参加するハビリスジャパンとしてサポート体制を整えて、スポーツ教室やお料理教室などのイベントを開催すれば、子どもたちも安全に楽しく参加してもらえるかなと。
講師として参加していただいている民間の方々も、障害がある子どもたちにどう接していいのか分からない部分もあると思うので、医療従事者のスタッフがうまくサポートできるようにしています。病院では患者さんと医療スタッフしか参加できませんが、こういう場だと教育関係者やスポーツ指導員などいろいろな方に関わっていただける。多くの方々に障害や義手について知っていただく機会も提供できると考えています。
参加する子どもたちは障害児に限りません。特に、兄弟姉妹はぜひ来てくださいと言っています。健常児も障害児も参加することで、障害がある子どもたちの存在を知ってもらいつつ、「一緒にいることが普通なんだ」「当たり前なんだ」と実感する場を提供できればと思います。
アンナ:障害者と健常者が一緒に、というのがいいですね。どうしても一緒の舞台を用意されることは少なくて、分かれて実施される傾向にあります。
藤原:それはやはり「知らない」ということが大きいと思います。障害を持っていることは特別ではないのだと知らないからだと思うんですよね。
アンナ:おっしゃる通りですね。障害が特別ではないことも、義手のことも、知っているだけで世界が広がると思うので、私もしっかり発信していきたいと思います。発信することはもちろん、お母さんたちの勇気につながるのであれば、せっかくだからイベントなども計画していきたいなと思いました。
藤原:ぜひやってください!
アンナ:ありがとうございます!
<終わり>
東京大学医学部附属病院リハビリテーション科医師。中学・高校時代は体操競技に打ち込む。大学卒業後は整形外科医としてキャリアをスタート。国立障害者リハビリテーションセンター病院勤務時に障害者スポーツと出会い、2008年北京パラリンピック日本選手団帯同医を務める。12年にカナダへ留学し、子ども用の義手について学ぶ。帰国後は現職。16年には一般社団法人ハビリスジャパン設立に関わり、現在は理事を務めている。
(Hint-Pot編集部・佐藤 直子)