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療養食が“手軽に購入できる”事実に注意 高齢猫に長生きしてもらうポイント
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手軽に買えるキャットフード、気を付けたい落とし穴とは…
瑛作:猫にあげる1日の食事量や回数で気を付けた方が良いことはありますか?
長谷川:キャットフードのパッケージの裏には、体重に対する適正量が書いてあると思います。その量でベストの体重を守ることができていれば問題ありません。回数は朝晩2回や夜1回など、いろいろなパターンがあると思います。
猫は基本的に1回ですべて食べてしまうことが少なく、1日かけて徐々に食べていくスタイル。ただ、与えた量をその都度で平らげてしまい、しばらくすると「お腹が空いた」という犬に似たパターンの子もたまにいるので、そういう場合は食事の総量を変えずに回数を増やすといいでしょう。
瑛作:キャットフードもいろいろな種類があって迷ってしまいます。
長谷川:いろいろなメーカーからいろいろな食事が出ていますね。便利な反面、気を付けた方がいいこともあります。例えば、腎臓病や尿路結石の療養食は本来、獣医師が診断をして処方する食事。肥満用の食事も猫の体型を見て「こういう食事をあげましょう」と提案しますが、最近は獣医師が処方すべき食事を普通にホームセンターなどで購入できます。これは危険な一面をはらんでいるとも思います。
腎臓病用の食事であれば、タンパク質の含有量を制限して作ってあるので、健康な猫が食べていると筋肉量が落ちる原因になります。なので、療養食に関しては、獣医師に相談していただいて、食事の内容や切り替える理由を理解しておいた方が良いでしょう。
司会:食事の大切さはアスリートにも通じます。
瑛作:そうですね。人間も含め動物だったら、食事は大事だっていうことですよね。そこは専門家の意見を聞きながらバランス良く摂った方がいい。レオンも尿路結石の食事を与え続けているので、一度獣医さんに診ていただく方がいいのかもしれません。
長谷川;16歳で最近検診を受けていないようであれば、血液検査や尿検査をしてもいいでしょう。恐らく以前は尿検査で結晶が出ていたんだと思います。でも、今の年齢で結晶が出ていないのであれば、わざわざ療養食を食べる必要はないと思います。
司会:病院で検査を受けることが多い場合は、ペット保険に入っておいた方がいいのでしょうか?
長谷川:これも飼い主さんの考え方次第ですね。病気とは無縁で長生きする猫もいますし、病気がちな猫もいます。ただ、獣医師の立場から言うと、使いたい薬があるけれど費用面で厳しいという場合、保険があれば飼い主さんの負担が少なくなるので、使いやすくなる一面はあります。
高額な手術が必要になった場合も、保険がカバーしてくれると、飼い主さんにとって選択肢が増えることにはなるでしょう。一方で、毎月の払う分の保険料を貯金しておく方もいるので、本当に考え方次第でしょうね。
高齢猫の幸せのために…獣医の意見を参考に飼い主がどうしてあげたいか
瑛作:レオンは高齢なので、少しでも快適に長生きしてほしいと思っています。1日でも長く一緒に暮らすアドバイスがあれば教えてください。
長谷川:寿命があり、病気や老衰で亡くなるのは避けられない、仕方のないことではあります。ただ、そこに至るまでの過程や生活は、できるだけ長く、良い状態で過ごしてほしいというのが飼い主さんの願いです。
生活の質を高く維持するためにも、病気の影はなるべく早く発見した方がいい。病気に気付くきっかけは、普段食べている食事ができないとか、体重や尿の量が変化したとか、日々のお世話で気付けるところだと思います。日々の尿の量など細かいところを気付くためにも、毎日同じ人が見てあげるのがいいかもしれません。
病気が見つかった時は、獣医と飼い主さんとの相談かなと思います。「これだけの期間を入院しなければならない」「このごはんをずっとあげなければいけない」「この薬を飲まなければいけない」など、私たちは医療的な側面からの意見を伝えますが、飼い主さんがどう考えるかはまったく別の話だと思っています。たまにしか会わない獣医師よりも、長い間一緒に過ごしていた飼い主さんが「こうしてあげたい」と思う気持ちが優先されるべきでしょう。
なので、獣医の言うことを全部真に受けないで、その意見を採り入れつつ、飼い主さんがどうしてあげたいかを考える。それが猫にとって一番適した生活になるのかなと思います。飼い主さんが「この子にはこの生活が合っている」を思う形があれば、それが一番幸せなこと。猫のためにもいっぱい考えていただいて、その通りにしてあげるといいと思います。
瑛作:先生、今日はいろいろありがとうございました! 今までぼんやりとしていたことが明確になって、今後は猫たちを細かな点まで気にかけてあげることができます。やっぱり僕はレオンを一番気にかけているので、健康診断に連れて行って、レオンのためにもいろいろ考えたいと思います。
長谷川:ぜひそうしてあげてください。
(Hint-Pot編集部・佐藤 直子)