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先天性欠損にリハビリの「リ」はいらない? 美馬アンナさんも感心「これは深い」
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「片手で何でもできる」に潜む「やりにくさ」
アンナ:なるほど。「できない」ではなくて「やりにくい」ですか。
藤原:はい。例えば「ちょっと工夫をしなければいけない」「別の道具を使わないといけない」「より時間がかかる」など、両手がある人に比べてやりにくさが出る動作は6割近くもあると言われています。
アンナ:やっぱりそうなんですね。
藤原:そこをどう解決していくかが我々の課題だと思っています。特に大人になってから手を切断された方は、切断された側の手を使うことが以前は当たり前だったので、大きな不自由さを感じて多くの方が義手を使います。
ただ海外と比べると、日本は義手を使う人が少ない。その理由は、切断されてから早い段階で義手を導入しないため、と言われています。アメリカでは切断してから1か月以内に義手を導入することを目標とし、片手に慣れる前に義手を使った両手動作ができるようにしています。
アンナ:元々手を使っていた感覚が残っているんですね。
藤原:そうなんです。自分の手より義手は機能が落ちるにしても、ある程度何かを持てたり、操作ができたり、ないよりは便利なので使う必要があると思えるんですね。ただ、先天性上肢形成不全の子どもたちは生活の中で必要性をあまり感じないので、義手を使うようにはならないというわけです。でも、義手に何かプラスαの機能を付けてあげれば、子どもたちはその機能に興味を持って、使うことを学んでいきます。
もう1つ、日本で義手を使う人が少ないのは、義手の診療を提供できる施設数が少なく、経験のある人材が少ないことにあると思います。限られた施設でしか対応できないので普及が進みません。
私が留学していたカナダではそういう課題がない。それというのも、「THE WAR AMPS」という100年以上の歴史を誇る戦争負傷者をサポートする慈善団体があって、義手や義足が必要な人々をこれまで長く手助けしてきました。彼らは先天性の子どもたちにも義手や義足の支給を支援してくれます。こういった環境が整っているのは大きいですよね。
アンナ:義手や義足を使いたい人へのサポート体制が整っているんですね。それはうらやましいです。
<後編に続く>
東京大学医学部附属病院リハビリテーション科医師。中学・高校時代は体操競技に打ち込む。大学卒業後は整形外科医としてキャリアをスタート。国立障害者リハビリテーションセンター病院勤務時に障害者スポーツと出会い、2008年北京パラリンピック日本選手団帯同医を務める。12年にカナダへ留学し、子ども用の義手について学ぶ。帰国後は現職。16年には一般社団法人ハビリスジャパン設立に関わり、現在は理事を務めている。
(Hint-Pot編集部・佐藤 直子)